ラウルとチッカ遅れ来る

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 “待ち人遅れ(きた)る“  彼にとってその異国の(まじな)いの言葉は、夢の中に出てくる夢の王国民の話す魔法の呪文と同じだったろう。それは、初めて彼が話した言葉が私たちにとっても、夢の世界の言語だったのといっしょだ。  彼が私の夢に現れたのは、悪夢を観たからだと言っていた。彼の言葉がわかるようになったのは、彼が驚くほど早く私たちの言葉を覚えたから。それでも彼の日本語はまだ、流暢と呼べるものではなく、たどたどしくカタコトを話すのみだった。その言い方がちょっと子どものようでもあって、一生懸命な彼を愛らしく思ってしまったのは素直に認めないとね。  私のほうも彼の母国語を覚えようと必死になったのだけれど、彼はすぐにカタコトの日本語と英語の混じった言葉を使うようになったから、少しだけしか覚えられなかった。
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