オカルト研究会調査記

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 書庫のドアが閉まるのとほぼ同時に、図書室のドアが開く音がした。  複数人の足音と、会話も二人の耳に聞こえてきた。 「弁当楽しみだなぁ」 「あまり期待しないで……」 「いや、旨いだろ」 「ハードル上げないで。食べさせないわよ?」 「そりゃあんまりだ」  亜紀と智勇と同じく、男子と女子一人ずつの会話だった。  薄暗い部屋の中で二人は声をひそめて話しする。 「弁当ですって、先輩」 「手作り弁当って奴か。青春だな」 「羨ましいですか?」 「それなりに。女子の手作り弁当とか食べた事ないもんなぁ」 「今日は昼ごはん食べてきてしまいましたね」 「そうだな。腹は減ってないな」 「カップスープありますよ。ポットもあるのでお湯も沸かせます」  そう言いながら亜紀は背負っていたリュックを床に下した。  おろし方がいささか乱暴だったため、ドスン、がちゃんと音が立ち、フワッと埃が舞う。  それを聞いて、思わず智勇は身を竦めた。 「ねえ、今なんか聞こえなかった?」 「さあ? 気付かなかったけど」 「書庫から聞こえた気がする」 「それは完全に幽霊だな。知ってるだろ、書庫に幽霊が出るの」 「止めてよ」  女子の声が少しだけヒステリックになった。 「何なら、中確認してみるか?」 「いや。気のせいだもん」 「まあ、鍵が無いから開けられないんだけどな」 「え、そうなの?」 「なんか、先生が無くしたらしい」  二人の声が遠ざかっていくのを聞きながら、智勇は亜紀に非難の目を向けずにはいられなかった。 「違いますよ。これは私が無断で作った合い鍵です。オリジナルはちゃんと戻しました」 「それはそれで問題だろ……」  ぷくッと頬を膨らます亜紀に、今度は呆れた目を向けるしかない智勇だった。
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