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小鳥遊駿佑だ。
今日も端正な顔をして、服装などにも隙がないが。
遊びもない。
そのとき、
「白雪さーん、今日、一緒にランチ行かない?」
とこの間、自動販売機の前でちょっと話した人事の福田鈴加が後ろから話しかけてきた。
ひっ、と万千湖は固まる。
ちょうど、駿佑が自分に気づき、口を開こうとしていたからだ。
人のいる場所で見合いの話などしない方がいい、とか思いそうにもない駿佑は、
「この間の見合いの件だが」
とか、いきなり言い出しそうで怖い。
万千湖がそんなことを考えている間にも、
「このあ……」
と駿佑は想像と一言一句違わぬ感じに言いかけていた。
焦った万千湖は、
『お見合いとか、この場で言わないでくださいっ』
という感じのポーズをとる。
駿佑が口を開きかけたまま止まった。
「白雪さーん」
鈴加が近づいてくる。
『お見合いとか、この場で言わないでくださいっ』
というポーズを万千湖は、またとった。
駿佑は口を閉ざしたが。
こちらの意図が伝わったのか。
自分のポーズが変だったので、呆れて、こいつには関わらないでおこう、と思われたのかは、わからない。
駿佑は鈴加がやってくる前に、すれ違いざま、
「あとで連絡先寄越せ」
とぼそりと言っていなくなった。
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