朝でございます、マイ・ロード

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朝でございます、マイ・ロード

 夜が明けて、朝日が照らす部屋の中。  愛してくれた人が隣にいる。  気付かれないように、そっと口づけを交わす。 「おはようございます、マイ・ロード」 「…………ん、ああ……」  寝起きの王子はいつもこうだ。変わらない王子が目の前にいることに少しホッとする。 「今日はマリア姫との結婚式があります。まずはシャワーを浴びてください」  メイド服をきっちり着て、王子の管理を生業とするクラリッサの1日が始まった。  今日を境に、新しい日々が始まるのだ。  零れた涙は王子のベッドに吸い込まれていった。主人のものを汚すなどメイド失格である。  袖で涙を拭いて、眼鏡を掛け直し、クラリッサは顔を上げた。  王子の色香が体中に染み付いている。 「そうだ、クラーラ。式典の後、クリサが伝えたいことあるらしいから会ってやってくれ」 「かしこまりました、マイ・ロード」  充血した目を閉じてうやうやしく頭を下げた。
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