朝でございます、マイ・ロード

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 結婚式は壮大だった。  全国民が待望した、マリア姫のドレス姿。あれ程の美しさは、アストリアの歴史を振り返っても片手に収まるほどのものだ。男女の垣根を超え、誰もが溜息をついた。  王子も立派だった。10歳、いや、それよりも前からクラリッサはその姿を見ていた。彼の成長を一番近くで見ていたからこそ、クラリッサの目には自然と涙が湛えられていた。  そして、その隣が自分でないことにも。  それでも、最後まで王子をエスコートする職務は忠実に果たした。彼女の矜持は王子と共にあることだ。  式典の最後に、王子は国民に言葉を紡いだ。 「我が命をこの世にもたらした父上、母上、共に戦った友、そして我が親愛なるアストリアの国民よ。今日をもってアストリアにまた1つ歴史が生まれた。我はマリア姫と共に、栄誉あるこの地を統べるに至るだろう。  マリア姫の功績は言わずとも誰もが知るところであろう。マリア姫こそ、アストリアの宝であることは疑いようがない。よって、マリア姫には最大の賛辞を。この場の全ての国民が、割れんばかりの拍手をもって、マリア姫の栄誉を称えるのだ!」  会場が大雨のような拍手に包まれた。それに手を振るマリア姫。拍手にすら映える眩しい美貌が場を支配している。  鳴り止んだ拍手に王子は再び口を開ける。 「忘れてはならないのが、我が妹アンネロッテだ。アンネロッテが遺したものは、今もアストリアを支えている。新しい技術を産んだアンネロッテは死してなお、我らと共にあるのだ! 我が妹アンネロッテに今一度、哀悼を」  全国民の妹などと評された元気娘は15歳という若さでこの世を去った。  誰もがあの事故を悼み、黙祷を捧げた。 「最後に。どのような身分であろうと、どの民族であろうと、どの宗教を信仰していようと、男、女、子供、老人、総ての国民が互いに手を取り合い、共に歩む未来を作るのだ。我らは誉れある、誇り高きアストリア人だ。共に進もうぞ!」  盛大な拍手、マリア姫万歳などの歓声に包まれながら結婚式は終わった。  クラリッサが愛した王子は、自分が見込んだ通りの人物だった。
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