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1話 聖女フェルマ、この度、勇者パーティの聖女として、魔王討伐の旅に参加することになりました
私フェルマ、18才。
この度、勇者パーティの聖女として、魔王討伐の旅に参加することになりました!
いえーいーーー!
もう自室で小躍りしたわ。
だって、これでやっと、こんなクソつまんない神殿を出ることが出来るんだもん!
13才の時にヒーラーの力があることが分かってから、貧しい農家の5女だった私は、すぐさま神殿に奉公に上がることになった。
まあそれがなかったら娼館にでも売られてたとこだったので、それよりは断然良かったんだけどね。
それから5年、毎日毎日朝5時に起きて祈りを捧げ、昼から夕方は神殿にやってくる人々にヒールを施し、質素な食事をして夜8時に寝る規則正しい生活を余儀なくされ。
もうーーーーこんな生活イヤ!
これじゃ、聖女じゃん!いや、聖女なんだけど、私はふつうの18才の好奇心旺盛な女の子なわけ。こんな隠遁した仙人みたいな修行生活、耐えられないわけよ。
もっともっと自由に好きなことをして、好きなとこに行って、美味しいものも食べたいし、恋だってしたい!
こんな、爺さんで枯れた神官しかいない、カビ臭い神殿で青春散らしてる場合じゃないんだよ!
でも病気やケガに困ってる人を助ける仕事が嫌なわけじゃない。とてもやりがいがあるし、私の無駄に多い魔力で、たくさんの人を助けられるのは天職だと思う。
苦しそうだった人が笑顔になるのを見るのは、とっても嬉しい。
なかなか発現しないと言われる、体の欠損や、死に直結するような重傷でも即治せるエクストラヒールも14才の時に出来るようになったし、今回の勇者パーティ加入も、その実績が国の耳に入ったかららしい。
神殿での修行生活5年の苦労が実を結んだ、って感じでここだけはほんと、良かった。
そして、勇者パーティと初めて顔を会わせた時、私は決めた。
ぜったい、勇者様と結ばれて、神殿と永遠におさらばしようって。
勇者様はこの国の王子様だった。金髪碧眼の見目麗しい方で、見た瞬間、あまりの美しさに瞳孔が開いて、口をぽかんと開けてしまった。
こんなに素敵で綺麗な男の人なんて、本の中にしか存在しないと思ってたもん。
日頃神殿で、爺さん神官達に囲まれてた私には、体に雷が落ちたみたいな衝撃だったの、分かる?
おまけに輝くような笑顔で、
「聖女フェルマ。これから共に戦う仲間として、あなたが加わって下さって本当に嬉しく思います」
と手を差し出されて、もう、勇者様の周りだけパーって光輝いてるみたいだった。
よしっ!今から私は、完璧な聖女らしくふるまおう!
普段の口調は封印だ。
お淑やかでふんわりと微笑む聖母のような女になろう!
こんな素敵な勇者様と一緒にいるなら、やっぱり、それに相応しくなきゃ。
幸い、私は見た目だけはお墨付きをもらっている。
腰まで伸びた長いプラチナブロンドに濃い紫の瞳で、黙っていれば儚い美少女だと。
なので私はにっこり笑って聖女ムーブを決めた。
「はい。勇者様のお力になれるなど、身に余る幸せですわ。これから誠心誠意頑張りますので、よろしくお願いいたします」
そして勇者様の差し出された手を取った。
あーそうそう。
その場には勇者パーティの他のメンバーも一緒にいた。
みんな私と同じか少し上くらいの年頃で、勇者様の右隣には魔法剣士の女性がいて、勇者様の左隣にはーーー
それを見た時はぎょっとした。
え……男?女?そもそもヒト?
なんか、黒いフードを被った不気味な魔導士?がいたんだけど。
なんで不気味かって言うと、その顔のところが陰になって顔が全然見えないの。
まるで、黒い人型の影がフードを被って立ってるみたいな。
えっ?何これこわっ。
他のメンバーの人は特に気にしてないみたいだけど、この反応が普通なの?
まあそのあと、すぐに勇者様がエスコートしてくれて神殿を出たから、そのことはどうでも良くなっちゃった。
そしてその日から私の夢と希望に満ちた自由ライフ……じゃなくて、勇者様(とその一行)との魔王討伐の旅が始まったのだ。
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