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2話 フード野郎、魔導士のシオンは超絶塩対応
ザシュッ
勇者様の最後の一撃で魔物が絶命してドサッと倒れ、間を置かずに塵になっていく。
この世界に存在している魔物と呼ばれる瘴気の塊のような存在は、魔王が自身の力で作りあげた人工物だ。この世界に元々いた存在じゃない。
だから大きなダメージを与えて、魔王との繋がりが途切れると消滅するのだ。
「皆さま、どこかケガなどしてらっしゃいませんか?」
旅が始まって1か月、毎日聖女ムーブしているので、所作も大分馴染んできたところだ。
「ああ、大丈夫だよ」
ニコッと輝く笑顔で勇者様……イグニス様が応える。はわぁ~今日も素敵だわぁ。
「このあたりの魔物は討伐できたかしら」
額の汗を拭いながら言うのは魔法剣士のリアナだ。綺麗な赤毛と緑の瞳の、豊満ナイスバディ美女。王国の兵団の剣士なんだって。
リアナは明るい気さくなお姉さんだけど、イグニス様にボディタッチが多くて、私はついやきもきしてしまう。
だって、私、胸は完全にリアナに負けてる。
イグニス様が巨乳好きだったらどうしよう。
「もうこの付近に魔の気配はない。早く街行こうぜ」
魔導士のシオンが言った。
シオンが喋るのを最初に聞いた時は、衝撃だったわ。
え、口あったんだ。
ていうか、それが意外に若い男の声で、なんならちょっとイケボだったことが衝撃だった。
でもシオンが喋ったことで、ちょっとほっとしたんだよね。話が出来るなら通じ合えるかもって。
この1か月で、毎日寝食を共にして、リアナとは大分仲良くなれたと思う。
イグニス様も最初より気さくに話してくれるようになったし。
けど、このシオンだけはまだなかなか打ち解けられてない……というか、なんか私、シオンに嫌われてる?
仲良くなろうと思って色々話しかけたんだけど、
「シオン様はどちらのご出身ですの?」
「さーな」
「シオン様の魔法って本当に素晴らしいです。私感嘆いたしました」
「あっそ」
「シオン様はいつ頃イグニス様たちと出会われましたの?」
「……どうでも良くね?」
……しょっぺーーー!
塩!塩だよ!もう!すべてこんな感じで超絶塩対応なのだ。しかも他のメンバーには、私ほど塩対応ではないのがまた腹が立つ。
こっちが下手に出てりゃ調子に乗りやがって!いつか目にもの見せてくれるわ!
内心黒々とした想いを抱きつつも、儚げ美少女フェイスで『私傷ついてます』的に、寂し気に微笑んでやったけど、微塵も罪悪感なんて感じてない風に流されたわ。ちっ。
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