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(イ)11.「かみなり小僧の涙」
「どーん」
浴衣(ゆかた)姿の若者たちが、天を見上げる。
「僕だけ一人ぼっち」
かみなり小僧が、下界を見下ろす。
「じゅん」
打ち上げられた最初の花火が、かみなり小僧の涙で消えた。
もう一粒
「じゅん」
次の花火も、途中で消えた。
また一粒
「じゅん」
「いやだー、夕立だ」
「せっかくの花火大会なのに」
あちこち浴衣が揺れている。
かみなり小僧は、涙をこらえた。
ひとりぼっちの、かみなり小僧
歯を食いしばって涙をこらえた。
空は、また、晴れてきた。
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