母親

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 この手の霊視は何度も聞いてきた。またインチキだろう。でもドライヤの件が気になった。だから敢えて外出したのだ。これでもし自分に何かあれば、それこそ本当に息子と繋がれたことになる。危険なんてどうでもよかった。むしろ息子のところに行けるなら本望だ。  お婆さんにいわれたとおりに終点でバスを降りた。渓谷への道は外灯で明るく、坂を下ると渓谷の岩場に出た。  岩場は月明かりに照らされ水が流れる音だけが下から聞こえてくる。川はどれくらい下を流れているのだろうか。岩場の先端から暗い深淵を覗き込むと、闇に呼ばれてている気がした。あそこに息子が……。 「危ない!」  聞き覚えのあるその声で我に返った瞬間、そのままストンと岩場を滑り落ちた。
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