27人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
咄嗟に草を掴み滑落を免れたが自力で上がることができない。闇に引っ張られるようにずるずると身体が沈んでいく。ここで死ぬんだと思ったそのとき、誰かに両手を掴まれ岩場にひっぱり上げられた。見上げると農作業姿の初老の男性が立っていた。
「大丈夫か?」老人も息を切らしている。
「はい」そう答えるのがやっとだった。
呼吸が整ってくると老人に支えられながらよろよろと立ち上がり一緒に岩場を降りた。腕があちこちすり切れ、細かい草が服についている。
最初のコメントを投稿しよう!