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「危なかったなあ。あんた運がいいよ。この時間は誰も来ないんだ。僕もあっちのワサビ農園の様子を見るためにたまたま林道を歩いていたら、息子さんが走ってきて『お母さんが落ちた』といったもんだから慌ててきたんだ」
「息子がですか?」
「うん。血相変えていたから、こりゃたタダ事じゃないと思って」
「それは、どんな子でした?」
「え、中学三年生くらいかな。運動部のジャージ姿で。息子さんじゃないのかい?」
「いえ、息子です」
なぜか否定する気にならなかった。
「ここの胸のところにバスケットボールのマークが入ってたからバスケ部でしょ。うちの孫もバスケ部だからね、分かるよ」
「そうなんです。バスケ部なんですよ」
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