27人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「五番って書いてあったからキャプテンなんだね」
「はい。キャプテンです!」
「大したもんだ。息子さんどこ行ったかな。ジジイ一人じゃ無理だと思ってほかの人を呼びに行ったかな。しっかりしてるね」
「ありがとうございます。上に行ってみます」
「うん。じゃあ、もう落ちないようにね」
老人は半分冗談混じりにそういうと、ワサビ農園があるという方へ歩いて行った。
Mは周囲を見回した。渓流がザアザア流れる音だけが聞える。さっき「危ない」と耳元で聞こえた声はあの子の父親の声にとてもよく似ていた。声変わりをしていて大人っぽくなっていた。とても熱いものが頬に触れたので何かと思ったら自分の涙だった。
最初のコメントを投稿しよう!