母親

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「五番って書いてあったからキャプテンなんだね」 「はい。キャプテンです!」 「大したもんだ。息子さんどこ行ったかな。ジジイ一人じゃ無理だと思ってほかの人を呼びに行ったかな。しっかりしてるね」 「ありがとうございます。上に行ってみます」 「うん。じゃあ、もう落ちないようにね」  老人は半分冗談混じりにそういうと、ワサビ農園があるという方へ歩いて行った。  Mは周囲を見回した。渓流がザアザア流れる音だけが聞える。さっき「危ない」と耳元で聞こえた声はあの子の父親の声にとてもよく似ていた。声変わりをしていて大人っぽくなっていた。とても熱いものが頬に触れたので何かと思ったら自分の涙だった。
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