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霊感占い師
Jは車で中央郵便局に向かっていた。国家試験の願書受付の最終日を一日間違えていたのだ。消印有効だから二十四時間開いている中央郵便局なら今日の消印がもらえる。
Jの職業は電話での霊感占い師である。その商売に就くのは驚くほど簡単だ。まず業者に登録して講習を受け、あらゆるノウハウを教えてもらう。
宣伝広告は運営会社がやってくれるので、あとは自宅に居ながらにして電話がかかってくるのを待つだけ。
客が払うのは一分二百円だが、こちらの取り分はその半分の百円だ。霊感占いとうたっているが登録に霊能力は不要である。誰だってなれるのだ。
しかし一分二百円も払って電話してくる人間なんて本当にいるのだろうか? 最初は半信半疑だったがこれがかなりかかってくる。
会社の向かいの席のよく目が合う子が自分に気があるかを知りたい男、旦那の浮気を調べて欲しい人妻、単に話相手が欲しいだけのソープ嬢などなど。
こんなことに一分二百円も払うとは驚きだった。それでも一度電話がかかってきたら最低三十分は話を引っ張るようにしている。そうでないと儲けにならない。
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