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そのとき明日引っ越すともいっていた。あれがS君のお母さんと話をした最後だった。
その後、お母さんがどこで何をしているのかは分からない。
あのときおやつをとりに帰らなければ、もっと早く廃材置場に戻っていれば、あの前夜に戻れれば。そればかりを考えていたが、いつしかその思いも封印し、大学を卒業して一般企業に就職し、友達の紹介で知り合った彼と明日結婚することになった。
彼はとても優しくていい人だ。S君が大人になったらこういう人だったかもしれないと初めて会ったときに思った。彼はS君の事件のことも知った上でわたしを受け入れてくれた。
たぶん今もわたしが何を考えているか分かっていると思うが聞いては来ない。
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