結婚前夜 【159回超妄想コンテスト優秀作品】

写真家

　だがこの写真の花嫁はその点においては全く苦労はなかった。ファインダー越しに見る彼女は、顔が小さく、色白ではかなげなで美しく、シャッターを切るのが楽しみだった。

　花嫁の衣装とメイクアップの関係で撮影は一日で終わらせる必要がある。この日も一日で三か所を回り、最後は町の有名な洋館で撮影をした。

　自然な表情を引き出すために、いつも移動中になるべく雑談をして新郎新婦と打ち解けるようにしているが、この花嫁は特に口数が少なく、接し方に悩んだ。かといって暗いとか陰気というわけではなく、不機嫌や不愛想でもない。その静けさはけして不快なものではなかった。