花嫁

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「そうだっけ。明日行ったら絶対に聞かされるよ。息子さんが『お母さんが川に落ちた』って助けを求めてきたから、スーパーマンみたいに自分が飛んでいって引っ張り上げて助けたって。その息子さんが僕と同じ年くらいで僕と同じバスケ部のキャプテンだっから何回も聞かされてるんだ。自分があのときワサビの様子を見に行かなかったらどうなっていたことかってね」 「そういえば……お爺さん、ワサビ農園をやっているんだったわよね」 「そうだよ」  どうして気づかなかったのか。お母さんの話は本当だった。  S君はたしかにバスケ部のキャプテンになり、お母さんを助けたのだ。 「どうしたの?」と彼が不思議そうにわたしを見ている。  窓辺にもたれると、S君が死んでから初めて、わたしは泣いた。                               完
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