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まさか、今も通じないとは。
「多生、あんた……何が目的なんだ?」
達する様子の無い雄芯を、それでも巧みに緩急をつけて揉み上げながら、聖はそっと疑念を口にした。
全ての違和感を無視して、このままセックスに没頭したいが。
やはり、気になる。
あの場所で出会ったのを、奇跡の再会だと素直に喜びたいが。
しかし、そう純粋に思い込めるほど、聖はもうガキではない。
何かしら、この再会には裏があるのだろうか――
だが、多生は聖の問い掛けに答える事無く、髭だらけの顔をクシャリと崩してみせた。
「おいおい、悲しいな。オレを疑っているのか?」
「で、でもっ」
「オレは、久しぶりにお前に会えて心底嬉しいってのに」
「それは――オレだってそうだけど」
多生は聖よりもずっと年上だ。
史郎より、三つ上だったから……今は55か?
しかし、こんな風に子供が拗ねたような顔をされては、常のように厳しく追及する言葉も出てこない。
「あんたを、こんな風に疑いたくはないが――」
戸惑いがそのまま声に出てしまい、聖はカッと頬に朱を走らせる。
数多の男達を手玉に取っているこの自分が、この男に、ウブなガキのように言い包められようとしているのか?
断じて、そんな事があってはならない。
聖は再び気を張ると、握り込んでいた雄芯へキュッと力を入れた。
ビクリと反応する多生に嫣然と微笑みかけ、もう一度尋問を開始する。
「なぁ、誰かに頼まれたのか? もしかして、乗っ取りか? 今の芸能事務所はオレのワンマンだ。経営者のオレを陥落させたら、事業にもかなりの影響が――」
「そんな事は考えてないよ。ただ、会いたかっただけだ」
これは、ひどい殺し文句だ。
こんな事を言われては、いつまでも強気に振舞い続けるなど不可能だ。
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