1 Benefactor

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 まさか、今も通じないとは。 「多生、あんた……何が目的なんだ?」  達する様子の無い雄芯を、それでも巧みに緩急をつけて揉み上げながら、聖はそっと疑念を口にした。  全ての違和感を無視して、このままセックスに没頭したいが。  やはり、気になる。  あの場所で出会ったのを、奇跡の再会だと素直に喜びたいが。  しかし、そう純粋に思い込めるほど、聖はもうガキではない。  何かしら、この再会には裏があるのだろうか――  だが、多生は聖の問い掛けに答える事無く、髭だらけの顔をクシャリと崩してみせた。 「おいおい、悲しいな。オレを疑っているのか?」 「で、でもっ」 「オレは、久しぶりにお前に会えて心底嬉しいってのに」 「それは――オレだってそうだけど」  多生は聖よりもずっと年上だ。  史郎より、三つ上だったから……今は55か?  しかし、こんな風に子供が拗ねたような顔をされては、常のように厳しく追及する言葉も出てこない。 「あんたを、こんな風に疑いたくはないが――」  戸惑いがそのまま声に出てしまい、聖はカッと頬に朱を走らせる。  数多の男達を手玉に取っているこの自分が、この男に、ウブなガキのように言い包められようとしているのか?  断じて、そんな事があってはならない。  聖は再び気を張ると、握り込んでいた雄芯へキュッと力を入れた。  ビクリと反応する多生に嫣然と微笑みかけ、もう一度尋問を開始する。 「なぁ、誰かに頼まれたのか? もしかして、乗っ取りか? 今の芸能事務所(ジュピタープロダクション)はオレのワンマンだ。経営者のオレを陥落させたら、事業にもかなりの影響が――」 「そんな事は考えてないよ。ただ、会いたかっただけだ」  これは、ひどい殺し文句だ。  こんな事を言われては、いつまでも強気に振舞い続けるなど不可能だ。
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