118人が本棚に入れています
本棚に追加
「――多生」
「昔みたいに呼んでくれよ、ターさんって」
多生はそう囁くと、それまで馬乗りになっていた聖の腰へと両手を回した。
聖が抗う前に、大きな手の平を巧みに使い、脇腹から下腹部へぬるりと滑らせる。
「あぁっ!」
そこは、聖の性感帯だった。
思わず漏れた声に、多生はニヤリと笑う。
「相変わらず、ポイントは変わらないな」
「だ、ま……れ」
「でも、ここだけじゃあイケないだろう?」
多生はそう言うと、脇腹を下から上に撫で上げる。
それだけで聖の身体はビクビクと魚のように跳ね上がるが、言葉の通り、それだけで達するのは無理だ。
「blue balls?」
※隠語「射精できなくてモヤモヤするだろう?」
「う……」
だったら、あんたのそれを突っ込んでくれよ!
そう言いたいように腰を揺らす聖であるが、多生は素知らぬ風を装って、指先でクルクルと後孔を刺激するだけだ。
ヒクリと震える愛らしい後孔を前にして、理性を保った男などいないのだが。
しかし多生は、ただ微笑むだけである。
――――どんなに男根を屹立させようが、先走を溢れさせようが、その顔は涼しいままだ。
(くそっ!)
聖はそれを確かめると、目元を紅く染めながら舌打ちをした。
多生は、昔からそうだった。
快感を持って男を受け入れることが出来るようにと聖を仕込んでおきながら、多生は一度として、自身では生身の挿入はしなかった。
こうして雄芯を勃起させておきながら、聖の中で射精した事は一度も無かったのだ。
「ターさん……」
甘い声で誘うが、多生は変わらない。
「さぁ、オレの手の中でイってみろ」
最初のコメントを投稿しよう!