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「や……」
終始優位に立ち、イニチアチブを取ろうと思っていのだが。
普段ならば容易いハズのそれが、どうしても上手く行かない。
聖が握る筈だった主導権はあっさりと多生に奪取されてしまい、聖はもう成す術がない。
悔しいが、それと同じくらいに……正直に言うと、嬉しい。
多生から与えられるのは、快楽と温かく包まれるような幸福感だ。彼の手管は名人のように巧みで、不快に感じる事や痛みも一切が無く、受け手のこちらは純粋に気持ちがいい。
恋人を抱くような優しい愛撫に、もしかしたら、自分は愛されているのではと信じ込んでしまいそうになるくらいに。
(そんなわけ無いって、散々思い知ったのにな)
自嘲するようにフッと笑いながら、聖は多生の手の上に自分の手を重ねた。
「ターさん、もうどこにも……今度こそ、行かないでくれ」
「――」
「オレの気持ちは知っているだろう? 愛してくれなんて面倒臭ぇことは言わないが、せめて傍に居て欲しい」
だが、それに答えを返す代わりに、多生は手の中に収めていた綺麗な雄芯へと刺激を加え始めた。丸みを帯びた先端を擦り合わせ、双玉もやわやわと揉み込む。
たまらず、聖は腰を跳ね上げようとするが。
「あぁっ!」
「可愛いな、holy」
そう余裕を見せながら、多生はゆっくりと上体を傾け、手の中で震える雄芯を口に含んだ。
攻守交代だ。
しかも多生の方が、聖よりもずっと上手だった。
躊躇いも無く、力強くじゅぶじゅぶと音を立てて雄芯を吸い込むと、厚い舌でアイスキャンディーのように舐り回す。持ち前の肺活量の違いを示すかのように、エンドレスでそれを続ける。
これには、さしもの聖も降参するしかない。
意志の力も理性も吹き飛び、ただの美しい一匹の獣になる。
「あ――あぁ!」
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