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にも拘らず、史郎はその肉体を花開かせる方法が一向に分からず、ただ暴力的に抉じ開けるように抱く事しか出来なかった。
苦痛でしかない行為を強いられ、必然的に、聖はますます史郎を嫌った。
史郎の愛は愚かなほど常に一方的であり、身勝手であったので、聖の歓心を得ることは叶わなかったのだ。
どんなに抱いても全く自分の事を見ようともしない聖に焦れた史郎は、鬱憤と苛立ちをそのまま叩き付けるように、ただ情念を爆発させるという悪循環に陥った。
当然だが、そんな拷問のような目に遭って、聖が快く思うわけがない。
聖が史郎に対して、心を許す事などあろう訳がない。
ましてや、愛を育むなど不可能だ。
その事を誰よりも実感していたのは、皮肉なことに、青菱史郎本人であった。
「クソッ!」
毎回セックスの度に、精も根も尽き果てたように意識を朦朧とさせて横たわる聖を前にして、史郎は、胸が焦げる程に煩悶していた。
贅沢でも何でもさせて、聖を特別扱いして喜ばせたいのに。
だが、会うたびに敵意しか向けて来ない相手に対して、史郎は優しくすることなど出来なくて。力づくで体を押えて、喰らい付くようなキスをするしか術がない。
毎回、至近距離で憎しみを込めたような眼で思い切り睨まれるので、仕方なしに殴りつけるように言う事をきかせて、レイプのようなセックスを繰り返すしか出来ない。
こんな事、本当は望んでいないのに。
「クソ、クソ、クソッたれ!」
その日も史郎は、やり場のない怒りに任せ、拳で壁を殴りつけていた。
――――ドカッ!
「ど、どうしました、若頭!?」
この騒ぎを聞きつけた舎弟が血相を変えて、部屋へと飛び込んで来た。
そうして、拳から血を流している史郎に気付き、動転したような声を上げる。
「その手は!? 若頭、ケガをなさったんですか! すぐに手当をしないとっ」
「……ああ、そうだな。それと、コイツの後始末を頼む」
視線の先には、ベッドで事切れたように突っ伏している聖がいた。
青く若々しい肉体は精に塗れており、言いようのない退廃的な色香を醸している。
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