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舎弟はゴクリと息を吞むと、上ずった声で「はい」と返事をした。
史郎は指示を出したらそれまでと言うように、憤りながらも退室していった。
また聖を痛めつけてしまったという後味の悪い気分を払拭するために、これから違う女の所へ行って鬱憤を発散しようというところか。
だが、一人残された舎弟は、高価な白磁のように輝いている滑らかな肉体を前にして、激しく勃起していた。
「う、うぅ……」
殆ど無意識に、舎弟は震える手で、その身体へ触れようとするが――――
「おや? 勝手に若頭のイロに手を出したら、あんた殺されますよ」
背後から声を掛けられ、男は文字通りビクリと飛びあがった。
「だ、誰だ!」
「東山事務所さんトコロで女衒やらしてもらってる、多生ってもんです。それにしても、いけませんやねぇ」
「お、オレは、若頭に命令されてっ」
「はいはい、分かりましたよ。でもそれなら、オレも命令された口でね」
ひょっこりと部屋へ姿を現した笊川多生はそう言うと、ニカリと笑った。
「若頭のおっしゃるには、その子は男の抱かれ方ってもんを全く理解してないらしい。だから、ついついこっちも毎回酷い事をしてしまうと」
多生はそう言うと、手のひらをヒラヒラと振った。
「って事で、受け入れ方を教育してやれって命令されたんですよ」
「教育って――」
「許可は出てます。その子は、いったんオレの根城へ引き取りますよ。ここじゃあ道具もそろってねぇし。何なら、若頭に確認を取ってください」
そう言われては、反論する事は出来ない。
第一、この舎弟は本当にただの下っ端だった。
だが、自称女衒のこの多生という男の方は、青菱内部でもソコソコ名の通るやり手である。抗う事など出来ない。
「わ、分かりました……」
男は、不承不承身を引いた。
多生はニヤリと笑うと、意識を失ったままの聖をシーツで包み、そのまま抱え上げる。
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