10人が本棚に入れています
本棚に追加
一匹の子猫
明日、私は結婚する。ずっと大好きだった先輩と。憧れの先輩と付き合うことができたその日から、私はシンデレラになった。
結婚したら、オーシャンビューの新居に住んで、新婚生活をある程度楽しんだら、子供を作って、大きくなった子供たちと手を繋いで公園に行って、テニスをするの。私たちが仲良くなったきっかけは、テニスだしね。
「何ニヤニヤしてんの、晴菜?」
「あ!ごめん。明日がいよいよ結婚式なんだなぁって思うとワクワクしちゃって」
「ハハハ。それでニヤニヤしてたのか。本当面白いな、晴菜って」
「賢治さん、私、本当に幸せ!」
「ハハハ。俺もだよ。あ、そうだ!ちょっと仕事の用で寄りたいところがあるから、先に帰っておいてくれる?」
「うん、分かった。先に寝ておくね」
——家に帰り着いて、ハッと気付いた。結婚式打ち合わせの資料を会場に忘れてしまった、と。だから、私は会場まで遠かったけど、彼が車を使っているので、歩いて行くことにした。
歩いていると、公園に辿り着いた。
「あれ?こんなところに公園とかあったっけ?」
見たことのない公園だったけれど、花や樹々たちに呼ばれた気がしたので、入って行った。
すると、一匹の子猫が私の足元にふらりとやって来て、私の足首にスリスリしては、こちらをじーっと見てくる。茶色と白と黒の毛が絡まったりしており、前髪も伸びているため目元が見えにくい。毛並みは最悪だ。よく見ると、左足が赤く擦りむいている。
「どうしたの?怪我しちゃったの?お母さんはどこ?」
私はしゃがんで話しかけた。左手で顎の下を、右手で背中を撫でながら。子猫は、顎の下を撫でられるのが好きなのか、幸せそうにゴロゴロと鳴らした。
最初のコメントを投稿しよう!