一匹の子猫

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一匹の子猫

明日、私は結婚する。ずっと大好きだった先輩と。憧れの先輩と付き合うことができたその日から、私はシンデレラになった。 結婚したら、オーシャンビューの新居に住んで、新婚生活をある程度楽しんだら、子供を作って、大きくなった子供たちと手を繋いで公園に行って、テニスをするの。私たちが仲良くなったきっかけは、テニスだしね。 「何ニヤニヤしてんの、晴菜(はるな)?」 「あ!ごめん。明日がいよいよ結婚式なんだなぁって思うとワクワクしちゃって」 「ハハハ。それでニヤニヤしてたのか。本当面白いな、晴菜って」 「賢治(けんじ)さん、私、本当に幸せ!」 「ハハハ。俺もだよ。あ、そうだ!ちょっと仕事の用で寄りたいところがあるから、先に帰っておいてくれる?」 「うん、分かった。先に寝ておくね」 ——家に帰り着いて、ハッと気付いた。結婚式打ち合わせの資料を会場に忘れてしまった、と。だから、私は会場まで遠かったけど、彼が車を使っているので、歩いて行くことにした。 歩いていると、公園に辿り着いた。 「あれ?こんなところに公園とかあったっけ?」 見たことのない公園だったけれど、花や樹々たちに呼ばれた気がしたので、入って行った。 すると、一匹の子猫が私の足元にふらりとやって来て、私の足首にスリスリしては、こちらをじーっと見てくる。茶色と白と黒の毛が絡まったりしており、前髪も伸びているため目元が見えにくい。毛並みは最悪だ。よく見ると、左足が赤く擦りむいている。 「どうしたの?怪我しちゃったの?お母さんはどこ?」 私はしゃがんで話しかけた。左手で顎の下を、右手で背中を撫でながら。子猫は、顎の下を撫でられるのが好きなのか、幸せそうにゴロゴロと鳴らした。
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