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鉢合わせ
怪我した子猫が可哀想だったので、抱き抱えて家に連れて帰った。
2年前飼っていた猫のケージを引っ張り出して、ケージの中に毛布を敷き、その中に子猫を入れた。
「ごめんね。私、大事な忘れ物をしちゃって。取りに行ってくるから、ここで待っててね!」
そして、私は結婚式場へと向かった。
「あれ?さっきここに公園があったような気がしたんだけど」
どこかで道を間違えたのだろうか?さっき辿り着いたはずの公園が見当たらなくなっており、オシャレなレストランに辿り着いてしまった。
あれ?結婚式場ってこっちであってるよね?ここはどこ?まぁでも、少し歩き疲れたので、このレストランで少し休憩しよう。慌てないで携帯で道をもう一度調べたら結婚式場に辿り着けるはず。
「いらっしゃいませー」
シュッとしたウェイターさんが、私を奥の席に案内してくれた。すると、別のテーブルに見覚えのあるシルエット。賢治さん!?前の席は空席だけどコーヒーが置いてある。一体誰と話してるんだろう…。私が座る席からちょうど見える角度だったので、気付かれないように座って様子を伺うことにした。
「お待たせー!」
賢治さんの目の前に座ったのは、黒髪のロングの少し緩めのパーマがかかっている感じの女性だった。服装は、花柄のロングワンピースに茶色のブーツ。あれ?これは明らかに仕事の格好ではない。賢治さん、仕事の用でって言ってたような。まさか、デート!?これって浮気現場ってこと??いや、でも、結婚式前夜だよ?まさかねー。
「賢治、明日結婚式なんでしょ?さすがにもうそろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」
「大丈夫だよ。先に寝ておくって言ってたから」
「ふーん。結婚式前夜なのに、私と会うなんて、どうかしてるわね」
「何言ってんだよ。会いたいって言ったのそっちだろ?」
「まぁね。結婚したら中々会えなくなるかもしれないじゃない?」
「そうかな?大丈夫だよ、会えるよ」
「ねぇ、本当に結婚までしちゃうの?そこまでしないとダメなの?」
「付き合ってるだけじゃダメなんだよ。社長の娘と結婚までしないと、俺の父親の会社は助けてもらえないんだから」
「ふーん。大変ね、社長の息子って…」
「お金と地位のためには、仕方ないんだ。でも、それを分かって、お前は付き合ってくれてるんだろ?」
「まぁね。でも、面倒なことに巻き込まれそうになったら、ある日突然いなくなっちゃうかも」
「なんだよ、それ。猫みたいだな」
——嘘!?嘘でしょ?賢治さん、嘘だと言って!お金と地位のためって、どういうこと?本当は愛してなかったの?その女性とどういう関係なの?
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