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春が近づいてきたとはいえ、まだ寒い夜中
梅の花が咲き誇る、境内
神社の街灯に照らされた梅は、真っ白で
ふわふわとしていて
枝に、雪が付いているみたい
幻想的で綺麗な景色
冷たい石の階段に、お互い腰かけた
一段上に彼
その下に私
雰囲気も
ムードもある
周りも
複数のカップルらしき男女がぽつぽつといて
ひっそりと寄り添っていた
「次飲みに行かないの？」
「もー、しんどいわ」
「あ、そう」
「ホテル行きたいな
ホテル一緒に行こうや」
突きつけられた銃口
堂々と
そんな事を恥ずかしげもなく言える彼に
私は心底驚いたし、…引いた
「っはあ？何言ってんの？
嫌だよ」
苦笑いをしながら、彼をあしらった
「ええやん
一夜限りでも」
は…？
何言ってるんだ
バカなのかこいつ
ホテルが嫌だと言ってる人間が、一夜も過ごすわけがないだろが
そもそも
一夜限り、って言い方もムカつくわ
何？私はワンナイトの価値しかないって言いたいわけ？
…そう言う男
全員、腹が立つ
「付き合ってないならしない！付き合ってる人とするもんでしょ！
…私は彼女にならなきゃ嫌だよ」
最後のセリフを言った後
なんでこんな恥ずかしい思いをしながら、言わなきゃならないんだ…と、げんなりした
だって
なんだか私が告白したみたいじゃないか…
好きでもないのに
なんで
私がここまで気を遣わなきゃならないんだ
体目当ての男に
「俺今彼女作る気ないしなあ」
引かれた引き金
残酷な銃弾
撃たれた脳天
その衝撃に、斜め後ろにいる彼を見上げると、真顔で見下ろしていた
はあ…？
なんだそれ…
何その顔
真剣な顔しちゃって、さ
そんな顔して、そんな事言われたら
私が振られたみたいじゃん
じゃあホテル、誘うなよ
梅の花の優しい香り
静かな夜
幻想的で綺麗な景色
なのに
なんで、そんな言葉なんだろうな…
なんで、現実を突きつけて来るんだろう
最初から
なんか変なやつ
タイプじゃないって思ってたけど
仲良くなっても
ずっとそのままの印象と変わらないんだな、お前は
あなたが無神経で、クズみたいな男だと言うのは、もうわかったから
お前が都合のいい女だと引き金を引いたなら
都合のいい男として撃たれる覚悟をしたと言う事だからな
照準合わせて
引き金引いて
銃弾撃ちこむ
都合のいい男だとしても
身体は許してやらない
ムカつくから
バカなヤツ
下心隠しておけば、まだ可愛いかったのにさ…
撃ち抜くなら
心臓を狙ってよ
そんな出来事から少し経ったある日
また藤沢くんと二人で飲みに行った時だった
「彼女欲しい」
彼がそんな事を言ってきて、私はまたもや驚いた
あまりの変わり身に腹が立ったから、敢えて言う
「こないだ彼女作る気ないって言ってたじゃん
いらないんじゃなかったの？カ・ノ・ジョ！」
「こないだはそうやったかもしれんけど、気持ちが変わる事だってあるやん」
知らんわ、お前の心変わりなんか
どうでもいい
「彼女欲しいって言っておきながら、自分が来なかったんじゃん、飲み
友達怒ってたよ、そう言う人はいい、って」
「俺もそう言う女の人はいいわ」
はあ？
何様なんだお前は
誘ってやったのにその言い草
てめーは絶対、今後、女もいる飲み会に誘わねーからな
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