梅 ~東京LOVER~

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そんな藤沢くんは、まあ、言ってしまえば”私と付き合う気がない”と言っても 藤沢紀文:飲みに行こう とは相変わらず言って来たし、連絡してきた やれる見込みもないのに 何がそこまで彼を駆り立てるのか 諦めもせず 懲りもせず 飽きもせず 毎回毎回毎回… 私と飲んで 何が楽しいのか知らないけど… 佐和子:みんな誘った? お前が前回、酔って急に連絡してきた時 藤沢紀文:またみんなで飲みに行こ とか言うから、私も同じことを言った 藤沢紀文:誰も はあ…? 誰も誘ってないとか何なの? お前が、またみんなで飲みに行こう、とか言った癖に 何がしたいのか意味わからん… とは思ったけど 藤沢紀文:何時いける? なんて、結局二人で飲みに行く事になったり… シフトの代役を頼んだ後は と言うか、やまぴーに、じゃあ藤沢ちゃんに聞いてみると言われて、藤沢ちゃんが出てくれるって、って言われたからなんだけど その時、ありがとうねー、と藤沢くんにメッセージを送ったら 藤沢紀文:交換条件がある と、二人で飲みに行こうと提案をしてきて ちょっと負い目もあったから 佐和子:わかった と渋々返信したり…と なんだかんだ、誘われたら飲みに行くそれは変わらなかったし 誘われて断った時は、何となく後日誘い返す事もした もっと他の人と…飲みに行けば? 私の事彼女にする気…ないんでしょ? 一緒に飲みに行く意味…あんの? 生産性ある人と…行ったら…? なんて… それは私も同じ、か… 楽しくない ただの暇つぶしだよ 「仕事終わったら飲みに行こうや」 言葉でもメッセージでも、藤沢くんがよく言う口癖 何してんの? と 飲みに行こう 後ええやん、とか、いいやん 今日もそんな事を、仕事をしながら言われた その癖 もたもた帰りの準備する藤沢くん 「まだ行かないの!? はよー、はよー!」 「何なんそれ」 「何が? 遅いの!早くしてよ!」 「っとにお前は…やかましいやっちゃな」 そう言いながら、笑っていた彼を見て こっちはお前が遅いから言ってんのに、何呑気に笑ってんだ! とか思って腹が立ったけど… 同時に複雑な心境になった 何…嬉しそうな顔…してんの…? つまり 表情と言葉が一致していない そう言う事は以前にもあって… プライベートで、職場のみんなと遠出して朝まで飲んで、最終的に残った私含めた三人で、始発を何処かの駅で待っている間 私はめっちゃ体調が悪くなって、一人で新宿…まあ家が新宿だからなんだけど、そこに辿り着けるかわからなかった時があったんだ 基本私は酒が好きだけど、飲みすぎて体調が悪くなる…と言う事はなかった …記憶はよく飛ばしていたが… 始発の電車が来て 三人でお喋りしながら乗っていて 仲間のうちの一人が、池袋で乗り換えだから降りる、となった時 俺も池袋で降りるわ、って言う藤沢くんに、咄嗟に 「新宿まで一緒に帰ろうよ…」 って、一か八か、立ち上がった藤沢くんの袖を引っ張って、俯きながら言った 今、この状態で一人で電車の中に残されたら…新宿で降りられる気がしない… 身体が重くてダルすぎる… 取り敢えず新宿まで一緒に帰ってくんないかな… 藤沢くんは数秒、じっと突っ立っていた その時、藤沢くんの表情までは、私は調子が悪すぎて俯いていたから、見る余裕なかったけど… おもむろに、藤沢くんは私の隣に座り直した
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