沈丁花 ~Don't disturb~

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行は今まで 二人で飲みに行こう、などと誘ってくることはなかったし、それは私も同じだった そして行自身も、やまぴーや藤沢くんや雅人とは違い、仕事終わり飲みに行く事もせず、いつも仕事が終わるとそそくさと帰っていたんだ だから行と飲みに行く時は、誰かの歓迎会とか、お別れ会とか…そんな節目でしか一緒に飲む事はなかったのだ それは 彼女がいるから とお互い、知っていたし、思っていたから まあ、お互いかはわからないけど、私はそう思っていた でも そんなスタンスを決め込んでいた行に そんな事を急に言われると え… それって…デート? デートって事でいいのかな…? なんて 多少なりとも、意識してしまって 浮足立つ自分 「いいよ、行こう!」 彼女いるのにいいの…? なんて、ほんの少し気になったものの まあ、行が飲みに行こうと言ってるって事は、大丈夫って事なんでしょう、きっと なんて、深く考えずに二つ返事で了承した 何処にしようかな…とか考えながら 通勤で何時も通る道で、雰囲気の良さそうなお店があるな…と思い出し、そこにすることにした 日程を決めて、じゃあ再来週に行こう、となった けど 彼の都合がつかなかったり 合わなかったりが続いて 再来週、と約束していた日は、どんどん伸びていった そんな時 藤沢くんからまた飲みに誘われて、仕方ない一緒に行ってやることにした 散々飲んだ帰り道に寄った 歌舞伎町にある神社 そこで告げられた まあ、わかりやすく言っちゃえば セフレになってよ って言葉 舐めた態度 私はそれに腹が立って お前がそう言う対応をするのならば 私もお前に対してはそう言う対応をするからな なんて 都合のいい男ポジションとして、つかず離れずに接する事に決めた 人の思いを踏み躙った事 後悔するといいよ そんなある日 雅人が職場を辞める事になり、みんなで、また、例によってお別れ会をすることになった なんか私の職場、こういうイベントとかこつけて、飲み会が好きだな… 行のお別れ会をしたお店と同じ場所で、雅人のお別れ会も行われた 酒の場も盛り上がり、テキーラみんなで飲もう!と、謎ノリが始まって、私は大分お酒が進んでいたのもあって、これは飲むとヤバイな…と思った 「かんぱーい!」 と、みんながテキーラをあおってるのを見ながら、瞬時に私は自分が飲んでいたお酒のグラスにテキーラを入れて、何食わぬ顔でレモンを齧った 甘酸っぱくて 刺激的 …けど そのテキーラが効いたのかは分からないが、行がトイレに行ったのを横目で確認した 会は盛り上がっているが、行は中々戻ってこない でも、ここで私がトイレに行くのも…おかしい 明らかに、行を目で追って、そして何処に行ったのか知っている事になる… 仕方なく行ったのだ、と言う 証人が欲しい 「行、いないね…?」 私は素知らぬ顔でやまぴーに聞いた 「え…?トイレじゃない?」 待ってました! 「私見て来るよ!」 そう言ってトイレの扉を開けると、行が蓋の閉まった便座を抱えながら倒れていた 「行、大丈夫!?」 なんて、行の背中に声をかけると、彼は起き上がって、大丈夫だよと言ったので 後ろから抱き締めた …だと思った
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