沈丁花 ~Don't disturb~

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その日も 好きな人の腕の中で目が覚めて、私は独りじゃないと安心する 「車借りてドライブ行きたいね」 朝を迎えたけど、まだ彼と一緒に居れるんだと嬉しくなる でも… 彼女知ってるんじゃないかな、なんて思ったりもするよ 携帯画面 ”新着のメッセージがあります” 私はそれを見ただけで、勘付いてしまうよ? 彼女も そのメッセージを見たら…何か思う事…あるんじゃないのかな、ってさ 知ってて、知らない振りをしてるのか それ 幸せなのかな…? 幸せではないよね それともそれは 彼女のメッセージを、私に見せたくないだけなのかな? 優しい優しいあなたの 彼女への、気遣いなのかな? 或いは 私と彼女から 自分を守る、防衛策なのかな? 私が逆の立場なら、そんな彼氏願い下げだけどね 何様だよって感じだけど そう思うんだ 誘ったのは きっかけは私だけど 彼女を大切に思うなら 水に流してくれたらよかったんだ キス、されてなかった事にすればよかったんだ 二人で飲みに行こうよ、なんて誘わなければよかったんだ そして、彼女も それが出来ない、彼の弱さを 守ってあげれないんでしょ?って… あなたの管理不足でしょう?って… 浮気した元彼も まあ、浮気をした元彼が悪いのだけど 浮気をさせた、私も悪いのだ 私は彼に言いたい事も言えずに…と言うのも、私の意見を聞き入れてもらえず、次第にそんな彼に意見する事を諦めた 彼と付き合い始めた頃、彼は社会人で年上だったから、学生の私は彼の言う事を全て信じて…まあ、真に受けていた 逆らえず、従って、合わせて、彼の言う通りに、従順に…ともすれば奴隷だった ってか言われたしね お前は俺の奴隷なんだから、とか 今考えれば何様なんだよっつー話だけど、私はそんな言葉も、友達に指摘されるまで真に受けていた つまりそれって、私もダメな所があったって事なんだ 彼を甘やかしすぎていた 私が至らない部分も大いにあったのだ 総て私の責任ではない けれど 浮気に至った原因に、私にも責任がある なんて…総て私の責任ではないとは言ったけど、ほぼ私が原因かもしれないと思ってしまう 九割五分くらい もっと嫌な事は嫌だと、耐えることなどせず、諦める事をせず、しっかり伝えればよかった もっとこうしたいと、こうして欲しいと、自己主張をすればよかった 彼の言う事を全て鵜吞みにせず、もっと自分の事も信じてあげればよかった そしたら傷つく事もなかったのに、と 今はその人とも別れて 独りぼっちで 孤独で 失うものは、何もない 築くものも、ないけど だから、気楽な、身軽な、傍観者でいられるんだ ああ、可哀そう 彼と結婚するのなら、これから先も大変ねって 私は、そんな彼の偽りの愛情を、甘んじて受け入れているけど その先に未来などないと感じているから と言うより 彼女のことは気になるけど 冷静になると 魔法が溶けると 奪ってやりたい、つまり、恋人と言う関係性になりたい、とまでは思わない 何様だよって感じだけど それは お酒に酔って、彼に酔っているだけだから 恋に恋してるだけだから 恋人ごっこをしているのに過ぎないのだ そして思うんだ この事実を 本当に知らなくて 付き合い続けている彼女なのだとしたら お気楽だねと 彼の背中を見送ると 帰り道 賑やかな街を歩いて帰ると 虚しさだけが残る そんな事を知らない彼女が 羨ましいと 私も、そう、幸せでいたいと
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