沈丁花 ~Don't disturb~

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結局 当日の休日に、車は予約一杯で借りれずに、私たちはホテルを出た 宛もなくぶらぶらと街を彷徨い、新大久保へ出た お腹空いたね、と何処かの韓国料理屋さんに入って、一緒に冷麺を食べた また街をぶらぶらして、新大久保の駅前で解散する事になった 「私たち、もうこんな関係終わらせた方がいいのかなあ?」 ぽつっと、彼の背中に向かって言った すると彼は振り返り 「俺は何も言えないよー、どうしたいの?」 と言った 何も言えない、か… 「どーしよう でもこんな関係に未来なんかないと思うけどね」 私がそう言った後 彼は大きく目を見開いて、びっくりしたような表情をして 半笑いになりながら、ため息まじりのような、呆れたような声色で言った 「なんかさわちゃんって、たまに男前な発言するよね」 え… 言われるまで無意識だった そんな自分を分析する きっと 頭の中では、はっきりわかってる事実や、根拠や、証拠を認めたくないんだ そうじゃない 本当は違う答えがあるんじゃないかって、希望的観測を相手に求めているから ”そうだね、彼女と別れるからもう少し待ってて” なんて… 違うよ 本当はこうだよ、と言って欲しいからワンクッション置く こんな関係終わらせた方がいいのかなと、質問する時点で、私の中では答えが出てるのに 不毛なやりとりを繰り返してる 恋に恋して 「じゃあ、またね」 そう言う彼の背中を、手を振りながら見送って またね とは言わなかった もう、会わないと決めたから 会わないと決めたけど、踏ん切りがついたわけじゃない… 彼と同じボディミスト 眠る時、ベッドにそれを吹きかけた 彼の匂い 彼に、抱きしめられている気持ちになる 包まれている気分になる 「…行」 寂しい気持ちを慰めながら 眠りに着く そんな日々を送った いいんだ 後悔してない いつまでも愛欲に溺れていても 私は 幸せにはなれない そんなある日の事だった ミストを使うことも止め 誕生日の時の写真を、眺める事はたまにしたけど それもいい思い出だと 前に進んでいた時だった 大和洋介:品川のホテルで、生田さんの二次会あるんだけど、一緒に行く? 携帯に、やまぴーからそんなメッセージが届いた ああ… 結婚したんだ 二次会か… 正直 めちゃめちゃ気になる 彼女の存在も 私が二次会に行った時 彼がどんな顔をするのかも…ね 私はメッセージを送る 佐和子:ごめん、その日多摩川の花火大会行くんだよね! 私は花火でお祝いするから 多摩川眺めてって言っといて! 携帯を閉じた これでいい これでいいんだ メッセージアプリの、彼のアイコンは、いつの間にか子供の写真に変わっていた 幸せそうな写真なのに 私に連絡をしてくる彼は まだ、あなたの事 私が好きだと思ってるのかな…?
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