和蘭石竹 ~さよなら大好きな人~

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と、一緒に行く約束をしてから、ふっと気付く …あ でも、昨日…見に行ったんだよね?藤沢さん もう一回見に行く事になるけど… 一応聞こうと思って振り返ると、藤沢さんは俯いて、また浮かなそうな顔になっていて… 声を掛けそびれる …ま、一緒に行こうって言ってたからいいって事なのかな? 雲一つない真っ青な空 JR上野駅の、公園口を出た場所 目の前にはコンサートホールが見える ここが上野恩賜公園… 上京して来てから、初めて来た… 駅を降りたそばから汗ばむ身体に、腕をまくり、目的地には直ぐにたどり着いた 「あった、ここ、ここです!」 チケットを購入して、階段を降りる 施設の中は、外の気温よりグッと下がり、なんなら少し冷たい パンフレットを貰い、静けさ漂う展示場に入ると、先程いたロビーよりも、更に静かな空間 みな一様に、無言で作品を凝視していた 色々な作品を見て行く中 遠くからでもわかる 100号は超える、迫力満点の絵 「あ…もしかして…あれじゃないですか…?蓮の花の絵…」 水面に揺れる、蓮の抽象的な絵 その完成された…と、下手に絵を書く能力があると思ってしまうのだが、オーカー色を大胆に引いて、光を乗せる するとたちまち絵に奥行き、立体感が出て、まるで本物の蓮がそこにあるかのように、見えるのだ 光を捉える事が出来れば、絵が変わる これが… 「クロードモネの…」 え!? 「…睡蓮…! …蓮じゃないですね、睡蓮でした!」 めっちゃ勘違いしてたー!! 恥ずかしすぎる! いや!でも、蓮も睡蓮も似てるよね!? 言葉も花も… 「画家になりたいんやないん?」 藤沢さんの苦笑いのような表情に、私も苦笑いするしかない… 「…はは…そう、なんですけど… 私美術史とか、勉強してきていないと言うか…高校も、大学も、美術に関係ない学校卒業して…絵画の知識、あまりないんですよね… 超有名なのだけ知ってる、みたいな それ以前に、好き勝手に自分の描きたい絵ばかり描いてきて…知識を勉強して来なかったと言うか… 本当は…美大…とか、美術科がある高校…行きたかったんですけど… 親に反対されて… ムカついたから大学在学中に、家、飛び出しちゃいました! ちょっとした反抗です! もう親の思い通りには生きないぞ!って言う」 『あー、そう!もう勝手にしろ! 金輪際何があっても面倒を見ないから! 大学行ったのが本当に無駄だったね 実家を頼ってくるんじゃないよ!』 「…なんて 高校や大学行く前に…そう出来ていればよかったんですけどね… 親に…迷惑も、お金も…かけずに済んだのに…って」 「まあ…過去は変わらんしな 罪悪感やと思うなら、恩返しすればええんやって 画家になって」 画家になって…恩返し… 「それに、逆によかったんちゃう? そう言う…ハングリー精神と言うのか…困難や苦境から這い上がってやるって言う根性になって」 「そう…なんですけどね…上京して、絵を公募展に出したりしてみたり…したんですけど…全然で… 小さなワークスペース借りて… 絵を売り出した事もあったんです! でも…そもそもお客なんかほとんど来ない…来ても…見て終わり… もっと絵の間口を広げて…イラストを出版社に売り込みに行った事もありました! ポートフォリオも名刺も、全部自分で作って…! でも…どこもダメで… ネットで売りにも出したけど…無名の作家って、いや、作品が売れてないから作家でもないし…当たり前…なんですけどね…全然で…」 『絵なんか独学で勉強出来るんだから学校なんか行く必要ないでしょ』 そうやって、色々、絵で生きていく方法、食べる方法を自分で模索しながら 結局未だにアルバイトしながら… 言っちゃえば、”趣味の絵”を描いて… そうじゃない 私は仕事で絵を描いていきたいんだ…! でも…
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