和蘭石竹 ~さよなら大好きな人~

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「独学で勉強するにも…限度があるんです…!! そんな時… もっと学生時代に絵の勉強すればよかった…いや、好きな絵ばっか描いてないで、もっと絵の基礎的な事、自主的に勉強すればよかったって…後悔して…」 それだけじゃない 「美術科の高校や美大で仲間がいたら、切磋琢磨し合えたかもしれない… 知識や情報を共有できたかもしれない、教え合う事が出来たかもしれない… 先生や教授がいたら、もっと知識も視野も、経験も広がったのかもしれない… もっと最適な方法で画家になれるかもしれない、最短ルートで画家を目指せるかもしれない… あの時、親にもっと、美術科のある高校に行きたいって、美大に行きたいって… 言えたら 言えれば よかったのにって…! 全部言い訳なんですけど… そう思ってしまう自分が、悔しいし、情けなくて…」 『この世に絵で生計を立てたい人がどれだけいると思ってんのよ』 「やっぱり親の言う通り… 私には画家なんて…無理だったのかな…なんて…」 「どう言う絵…描くん?」 「え… あ、こういう感じなんですけど…」 歩いていた足を止め、携帯を開き、自分が立ち上げたサイトを開こうとして、そこが美術館の中だと気付く 「あ、立ち話もなんなんで、何処か喫茶店とかカフェ…行きます?」 美術館の中にあった、モネの作品と同じ名前の、カフェレストラン 特別展の開催に合わせて、特別展メニューがあり、それを頼んで、食後のコーヒーを飲む 「へえ、花の絵ねえ ええやん」 「はは…ありがとうございます ガーデニングが趣味で…その趣味の絵を題材にしているんです」 「そうなんや 自分的にはどの作品が一番気に入ってるとか、自信作とか…あんの?」 「えー…そうですねえ…」 自分の携帯を持ち上げ、スクロールして絵を眺めた 自信作… 気に入ってる…作品…か 「これ…ですかね…」 そう言って、自分の携帯を目の前の藤沢さんに向けて差し出す 「和蘭石竹… なんて読むん、この花…蘭?絵的に…バラの種類?」 「カーネーション、です」 「へえ ほなそれ買うわ」 「え…」 「作品売れたな もう画家やん」 それは… そうかも…しれないけど… 「…藤沢さん… お気遣いして頂いて…申し訳ないですよ…」 「気遣いやないで」 え… 「俺、将来料理人で独立したいから 自分の店に飾る絵が丁度欲しいと思っててん」 独立… 「看板も考えてんけど、描いてくれたりする?」 「それは…勿論… どんなデザインとか…あるんですか?」 「あの有名な映画監督おるやん その作品に出て来る、天空にある城みたいな絵にな、葉っぱが沢山着いたような絵がいいねんな」 「へえ…いいじゃないですか…! じゃあいつか、本格的に独立する事になったら、是非教えてください そしたら私…その時は藤沢さんの、力になりたい… 応援しています」 「そやな ありがとう」 ありがとう 応援してる …簡単な言葉…なのにな 『あー、そう!もう勝手にしろ! 金輪際何があっても面倒を見ないから! 大学行ったのが本当に無駄だったね 実家を頼ってくるんじゃないよ!』 面倒を見て欲しいなんて、思ってないよ 頼ろうなんて、思ってないよ 私はただ… 応援して欲しかっただけなんだ 『花なんて育てるのめんどくさいし、何の役にも立たないんだから、今度から花は贈らないで』 私はただ… ありがとうとか、嬉しいとか言われたかっただけなんだ なのに どうしてこんなにも、難しい言葉なんだろう 藤沢さんと私は他人だから 無責任に、頑張ってとか、簡単に、応援してるとか言えるのかもしれない 母親と私は親子だから 母親が子供に、そう言う風に言う気持ちも、なんとなく…わかる でも 大好きなお母さんだからこそ 一番好きな人だからこそ… 私の大好きな人に 私の一番好きな夢を 応援して欲しかった
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