梅 ~東京LOVER~

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25歳 独身 彼氏、と言うよりは同居人一名 私より年下の、若い女の子と浮気をしている そんな家から早く出ようと決意し なるべく人と関わらない仕事…と、行き着いた飲食業のアルバイト 特にやりたい仕事でもなかった でも、働かなければ家も出れないし、飯が食えない 実家にも帰らない そう、決めたから 私はここで 東京で 独り、生きてゆく 仕事をしながら、さらっと従業員を紹介されたが、正直、社員もアルバイトも沢山いて、名前を覚えきれない そんなある日 「同期だけで飲もうよ」 と、同じ時期に入って来た男の人が言って 親睦会みたいな事がされることになった 仕事終わりの 新宿東南口 スポーツ観戦が出来る、イギリスの料理が多いバー カウンターでビールを注文する パイントってなんだ フィッシュアンドチップスと言う、イギリスでは定番だという、軽く摘まめるつまみも頼み、席に座った 店内にあるテレビでは、サッカーの試合が流れている それぞれ軽く、改めて自己紹介をした 「生田行雄(いくたゆきお)です」 私の三つ年上で、整った顔立ちをした生田さんは、この会の立案者だ 「飲食の仕事が好きで 自分で飲食業の会社をしたいんだ」 と夢を語ってくれた 彼は仕事中も物腰が柔らかく、優しい口調で、顔がいいというのもあるが、性格的にも女の子にモテそうだと、何となく思った 「稲城雅人(いなぎまさと)です、…パティシエしてます」 私の二つだったか三つ下の彼は、地元でパティシエをしていて、転勤で上京してきたらしい パーマなのか髪の毛をカールさせて、七三で分けた前髪 笑うと、ちょっと出た八重歯がチャーミングだと思った 「大和(やまと)でーす、よろしくねー」 「へー、じゃあ、やまぴーだね」 「なにそのあだ名」 やまぴーは私が勝手に付けたあだ名に、何とも言えない顔をしながら半笑い 身長が高く、何だか飄々とした彼は 初対面の私にも臆することなく、話しかければフレンドリーに会話して来た 「腰やっちゃって、働けなくなったんだよねー」 と言ったやまぴーは、美容師を辞め、飲食業界に転職してきたらしい 最後は私の番か… 「佐和子(さわこ)です、宜しくお願いします」 三人の男たちは宜しくー、と言って、改めてグラスを合わせて乾杯をした 「後もう一人いるんだけど…」 黒いビールを口付けながら、生田さんがぽつっと言った 「え、そうなんですか」 「うん 今日彼、仕事が休みだったんだよね、家から来るみたいで、ちょっと遅れているんだけど…」 「俺らとタメだよ」 やまぴーが、私と自分を交互に指さして言った 遅れている彼は、どうやら数日前に入社したらしく、一緒に親睦会しようと生田さんが誘ったらしい 私は彼とはまだ会っていないから、今日が初体面だ
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