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「パティスリー巡り好きで…
そこのパティスリーとかも、行ってみたいんですよね」
「えー!行きたい!一緒に行こうよ雅人!」
ある日の仕事終わり
雅人と、ケーキの話で盛り上がっていた時
「ええな、俺も行きたい」
視界の端の方で、着替えていた藤沢くんが、私達二人の会話に突然割り込んで来た
「…は?なんで藤沢くんも一緒に行くの?」
「ええやん」
「えー、藤沢くんも一緒とか嫌なんだけど」
「別にええやん!」
雅人は何も言わずに、と言うか、年上の藤沢くんに対して何も言えなかったんだろうけど
苦笑いをしているだけだった
結局
雅人と藤沢くんも入れた三人で、雅人が行ってみたいと言っていたパティスリーに行く事になったけど…
…雅人と二人きりでパティスリーに行けると思ったのに…
と、隣で呑気にケーキを頬張っている藤沢くんを恨めしく見た
三人でパティスリーに出かけてからと言うもの、藤沢くんは帰りの時間が私と一緒になると、飲みに行こうと誘ってくるようになった
「なんで藤沢くんと二人で飲みに行かなきゃいけないの?
やだよ」
「ええやん」
お前はよくても
私はよくないわ
見た目タイプじゃないし
恋愛対象外だし
人の気持ちを読めない汲めない感じが、なんかうざい
と思って軽くあしらっていたが
「今日飲みに行こや」
それは、朝出勤して勤怠を切った後にも言ってくるようになった
「タイミングが合えばねー」
つまりそれは行きたくないよ、のセリフだ
「なんでなん?他の人とか雅人とは飲みに行くやん」
うっ…!?
なんて事を言われた後は、図星を突かれたのもあり、渋々一緒に飲みに行った
けど
二人で飲みには行くのに
そのくせ
私が職場のみんなと飲んでる時に誘っても
女友達と飲む時に誘っても
仕事が忙しいとか、なんだかんだ言って来ない事が多い
ノリが悪いし、自分勝手なやつ
そんな印象しかいつも残らなかった
そんなある日の事
「転職が決まったんだ」
行(ゆき)が職場を辞める事になった
行とは生田さんの愛称…と言うより、呼び名?
以前連絡先を交換した時
「えー、メッセージアプリのID、yukiって名前にしてるの?俺の名前じゃん」
「俺の名前?」
「うん、俺、行雄だから」
あー、そんな名前だったっけ…忘れてた
「へー!
私yukiって名前、大好きなんだー」
それは、激推しのバンドのボーカルが、yukiって名前だから、IDにyukiと入れていただけだったのだが…
「そうなんだ、なんか嬉しー…」
そう言って生田さんはニヤニヤと笑った
嬉しいのか…
「じゃあ今日から生田さんの事、行(ゆき)って言うね!」
「あっはは、わかった」
というような出来事があったのだ
「生田さんのお別れ会しようよ」
やまぴーがそんな提案をして来た
お別れ会か…
クリっとした二重の丸い瞳に、通った鼻筋、パーマなのか天然なのかは定かではないが、ツーブロックにした髪にウェーブがかかっており、全体的に顔の整ったハンサムな見た目をしている行
出勤した時、いつも香水のようないい匂いがする行
そして
「えー、誕生日何あげたの?」
「ブレスレット買ったよ」
同期メンバーで唯一恋人がいた
「そろそろ結婚するんだ」
そんな事も言っていたっけ…
気遣いが出来て、物腰も柔らかくて、優しく、人当たりもよく、周りをよく見ているムードメーカーのような人
初対面の頃から、私に優しく接してくれ、気さくに話しかけてくれた
そんな彼とお別れするのは、なんだか寂しかったが
まあ新たな門出
最後にしっかり送り出してあげないとな…
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