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「とうちゃーく!お疲れさん」
「運転おつかれさま、ありがとう」
1時間ほど車が走った末に着いたのはとある海浜公園の駐車場で、私が車から降りると天野さんはいつの間にか首からカメラをさげていて後部座席からいくつか荷物をおろすと、公園へ向かって歩き始めた。
「こっちやで〜」
「どうして公園に?」
「まぁまぁ、もうすぐわかるわ!」
公園の入り口から少し歩くと丘になっていて、丸くてもこもこした可愛いらしい形の草が鮮やかに紅葉していて見事な赤色が一面に広がっていた。
初めて見る景色に目を奪われ自然に"綺麗"という言葉が口からこぼれる
すると横から、カシャっというシャッター音が聞こえてきた
きっとこの景色を撮っているんだと思いきや私に向かってカメラを構えている
眉間に皺を寄せてカメラの方を睨むと天野さんは、クスクス笑ってカメラをおろした。
「そんな怖い顔せんといてや!素敵やと思ったらシャッター押しちゃうんよ」
初めてかけられた異性からの"素敵"という言葉に胸が高鳴る
「こんな景色初めて観た……」
「コキアっていってこの時期に真っ赤に色付いてめっちゃ綺麗やからさ、小春さんに見せたくて!」
「もしかしてコーヒーが美味しく飲めるお供ってこの景色のこと?」
「ご名答!この景色を眺めながら飲むコーヒーは格別なんよ、上まで行ったら海も観えるねんで」
だから水筒にコーヒーだったんだ。
真っ赤に染まった丘を眺めながらコキアの間につくられた道をゆっくり歩いていると私でも知ってるコスモスが至る所で綺麗に咲いていた。
天野さんは時よりカメラを構えて写真を撮っていて
その姿は普段より真剣な表情だけど楽しそうで
その横顔がこの景色に負けないくらい素敵だと思った。
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