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僕は祈る気持ちで藤城さんの姿を見つめていた。
また時計を見て、パネルと蓋をもとに戻した。
「どう、でしょう・・」
ぱんぱん、と手をはたく藤城さんの顔は、いたく真剣だった。これは無理かもしれないと観念しかけた時、
「いつまでに完了しないといけないんですか」と、僕を見た。
「できるだけ早く。でも期限はありません」
表面張力を破って噴き出ようとする期待をねじ伏せ、調整が無理ならあの聖徳太子たちの半数以上とはお別れだぞと、自分に言い聞かせた。
「営業時間外、ということは、朝と夜、あ、昼もできる?」
「やってもらえるんですか」
ガッツポーズをして、藤城さんに抱きつきたかった。
「確約はできません。部品も、このメーカーのは取り寄せになりますが、国産で代用できるものはしていいですよね」
「はいはい、それはもう・・」
「作業できる時間を教えてください」
テーブルのひとつに座ってもらい、太郎店長が音を出していいと言った時間をそのままメモに書いた。ついでに僕の自宅と店の電話番号。
「へえ、キッカワさん、ですか。普通、ヨシカワですよね」
「そうですね。僕は普通じゃないみたいです」
「あ、すいません、そういう意味じゃなくて」
「いいんですよ、よく言われますから」
「あの、吉川さん、さっきも言ったように、確約はできません。でもすごくいい教材になってくれそうです。この時間だったら、僕も勤務の前とあとを使ってできそうなんで、料金は部品の実費で、ということにしましょう」
「え、いや、それは困ります。ちゃんと技術料をお支払いします。しかも早朝勤務と残業じゃないですか。遠慮なく取ってください」
いやいやこれは勉強なんで、いやいやそれでは申しわけない、いやいや、を何度か繰り返し、どうにかこれは金沢楽器の業務ということで得心してもらい、時間外手当は要求しないが、藤城さんが不安を覚えた場合は、アドバイスをもらうためにベテランを連れてくるので、その分はしっかり請求するというところで商談が成立した。
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