吉弥と慎之介

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それからの毎日は、目が回る様な忙しさで、まるで戦場だった。 吉弥が、単独ライブをするらしいと、聞いたファンや、芸能関係者が 「本当ですか」「いつですか?」「何処で?」「チケットは?」と 問い合わせが殺到して、事務所の電話がパンクしそうになり 小坂が、新しく作った、ホームページに、決まったばかりの開催日や、会場 チケットの販売日を載せて、やっと収まった。 一回目のチケットは、販売するや否や、数分で売り切れて、慌てて 追加する事になった。 「吉弥さん、今度ライブをするそうですね」と、吉弥は ワイドショーに呼ばれる事が、多くなり、その度に 「俺の初の単独ライブ、宜しくね~」と、告知し カメラに向かって、愛想を振りまいた。 やっと、準備の大筋が、固まった所で、クリフ監督が、主人公のジャックと スタッフを連れてやって来たので、また、戦場のような忙しさになった。 慎之介は、各局のワイドショーに、監督とジャックと共に出演し 様々な質問に答える「有難いけど、これじゃ、撮影する前から疲れるね」 クリフは、嬉しい悲鳴を上げた。 ジャックは、まだ15歳で、あどけなさが残る顔をしていたが 背は、慎之介と同じ位、高かった。 一度、事務所に連れて来た時に、天音が作った餃子を食べさせたら すっかり餃子にはまり、どこの店に行っても「餃子、有りますか?」と、聞く クリフは、慎之介と言う名前が、武士らしくて、気に入ったからと 役名も、慎之介にしたので、龍二は、撮影の時も 「慎之介」と呼べて、ご機嫌だった。 慎之介の方も、撮影していない時でも 「父上、天音が作ったおにぎり、食べませんか?」等と、嬉しそうに言う。 やがて撮影は、戦の場面になり、鎧や兜を付けた慎之介を見て 「かっこいいなぁ~僕も、着てみたい」ジャックがそう言う。 「止めときな、重くて暑くて、大変なんだから」慎之介はそう言ったが ジャックは、監督に頼みに行った。 「うん、それも良いかも知れない」クリフは、直ぐに、ジャックも鎧を付けて 慎之介と一緒に、戦に行くと言う、話に変えた。 ジャックは、自分から言い出したので、重さにも、暑さにも 必死で耐えていたが、その様子は、慣れない鎧や兜に苦労している 主人公に、ぴったりで、いい絵が撮れたと、クリフは喜んだ。 撮影は、どんどんハードになり、慎之介は、毎日、くたくたで帰って来る。 「天音~もう、一歩も歩けない、このくそ暑い中、鎧兜で走り回るんだ あ~~疲れた~」と、甘える。 「明日の午前中は、貴方の出番は無いから、朝は遅くても良いんでしょ 今夜は、ゆっくり休んで下さい」「うん、そうするよ」 「お風呂は?」「良い、事務所でシャワーして来た、汗だらけだったから」 そう言うと、ドサッとベットに倒れ込む。 「足、疲れているんでしょ」天音はそう言うと、ベットで長くなっている 慎之介の足の裏を、ぎゅっと押した。 「あ~~良い気持ちだ、足が軽くなるよ」「そう?」天音は、しっかり 足の裏を揉んだ後、ふくらはぎも、両手で下から上へと揉み上げた。 「どう?」天音がそう聞いても、返事が無い、見ると 慎之介は、もう寝息を立てていた。 「ふふ、可愛い寝顔」天音は、慎之介の寝顔を見ながら、自分も目を閉じた。
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