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最悪?の出会い
天音は、十分満足した、けだるい身体を、男の方へ向けた。
腹ばいになって、煙草を吸っている、端正な横顔、嘘みたいだ。
超売れっ子のタレント、竜崎慎之介と抱き合ったなんて。
そんな天音に、顔を向けた慎之介は「名前は?」と聞く。
「天音です」「あまね?」「はい、天の音って書くんです」
「ふ~ん、良い名前だな」名前を褒めてくれた、それも嬉しい。
「お前、最初、俺だって分らなかったんだろ?」
「はい、仮面を付けていましたから」「分からないのに、付いて来たのか?」
「来いって、言ったから、、」そう言う天音に、慎之介は、ため息をつき
「お前は、来いと言われたら、誰にでも付いて行くのか」と、呆れた声で言う
「そんな事無いです、何か、良い人みたいだったから」
「良い人ねぇ~」慎之介は、ふぅ~っと煙を吐く。
上原天音は、小さなスナックで働いていた。
雇われた時は、裏方だと言う約束だったが、いつの間にか、客席にも行って
お酌をしたり、カラオケで、一緒に歌ったりする様になっていた。
店は、ママと天音の二人しか居ない。
嫌だった、酔っ払いにも慣れて来たある日、二人連れの客が来た。
一人の男は、数日前にも、一度来た事が有る。
「お友達を連れて来てくれたの?有難う」天音は、お礼を言った。
もう一人の男は、じろじろと天音を見ていたが
「良いな、これで行こう」と、言い、高いお酒を注文してくれた。
「天音、良いお客だ、しっかり摑まえて置くんだよ」ママの冴子が
そっと、耳打ちする。
そんなママにも、景気よく酒をふるまった男は、雑誌社の編集長だと言った
「まぁ、偉い人なんですね」本当かどうか分からないが
ママも、天音も調子よく、お世辞を言う。
その時「あの~ホステス募集の紙を見たんですが」と、女の子が、顔を出した
「ちょっと、こっちへ」ママは、女の子の腕を掴んで「すみませんね~」と
二人に会釈して、奥に連れて行った。
すると「ねぇ君、ちょっとお願いが有るんだけど」と
編集長だと名乗った男が、低い声で、天音に囁いた。
「お願いって、何ですか?」「明日、うちの会社の主催で
パーティが有るんだけど、一人、欠席者が出てね
人数が合わなくて困ってるんだ、君、代わりに出席してくれない?」と言う
「ええっ、私がですか?」天音が驚くと
「な~に、仮面を付けるから、誰が誰かは分からないんだ。
人数さえ合えば良いから、出席したら、直ぐ帰っても良いんだ。
勿論、気に入ったら、ずっと遊んでいても良いんだよ」
「どうかな?頼みを聞いてくれたら、贔屓にして、毎晩でも来ちゃうよ」
もう一人の男も、そう言った。
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