最悪?の出会い

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「でも、私、パーティなんて行った事無いから、洋服とか、、」 天音が困っていると「大丈夫、洋服も靴も、こっちで全て用意するから 君は、普段着で来れば良いんだ」そう言った編集長は、半ば強引に 「じゃ、明日の夜8時に、ここへ来て」と、名刺を渡す。 名刺には《週刊誌リアル編集長、中野光義》と、書かれていて 裏には、会社までの地図も書かれていた。 本当に、編集長なんだと思っている天音に「じゃ、待ってるからね」 と、天音の胸の谷間に、一万円札を挟んで 「この事は、ママには内緒だよ」と、もう一人の、沢木と呼ばれた男が 会計を済ませ、帰って行った。 今、この店は、不景気で経営は苦しい、上客になってくれそうな二人を 捉まえておきたいと、天音は思った。 ママは、さっきの若い子を雇うつもりだ。 そうなったら、自分は辞めさせられる、こんな小さなスナックに ホステスは、二人も要らない。 常連客が、目新しい子を喜ぶのは、常だった。 もし、この上客を捉まえていられたら、ママも、私を残すだろう。 ここを辞めさせられたら、行く所は無かった。 幸い、明日は店休日だ、気楽なパーティみたいだしと 天音は、約束の時間に、その会社を訪ねた。 その会社は、雑居ビルの二階に有った。 階段を登って行き、ドアをノックしようとすると、中野が顔を出し 「やぁ、よく来てくれたね」と、嬉しそうに笑い、中へ、招き入れた。 もう、8時だと言うのに、煌々と灯りの付いた部屋には 山の様な雑誌や新聞、書類らしい物が、雑然と積まれた机が並んでいて 数人の男が、その中に、埋もれる様な感じで、パソコンに向かっていた。 「まだ、仕事をしているんですか?」天音がそう聞くと 「まぁね、雑誌の仕事には、昼も夜も、盆も暮れも無いんだ」 中野はそう言って「こっちだ」と、隣りの部屋のドアを開けた。 そこには、沢木がいて「来たね」と、にやりと笑い 「早速、ドレスを選ぼう」と、ロッカーを開ける。 中には、ドレスの他に、ワンピースやスーツなどが、何枚も有り その隣のロッカーには、色々な靴や、バックなどが、ぎっしりだった。 雑誌社なのに、何でこんな物が有るのだろう、天音が不思議そうに見ていると 沢木は、色々なドレスを、天音の体に当てて「う~ん、やっぱりこれかな」と 淡い、ピンク色のドレスを選び「着てみてくれ」と、カーテンで仕切られた 一角を指差した、そこは、試着室になっていた。 天音が、店で着る様な、けばけばしい物ではなく、上質で上品な マーメイド型のドレスは、天音に良く似合った。 「うん、良いだろう」中野も、それを見て頷き「じゃ、ここへ座って」 沢木は、大きな鏡の前に、天音を座らせると、慣れた手つきで 可愛い感じの髪にセットし、メイク迄してくれる。 天音が驚いていると「沢木は、若い頃は美容師だったんだ」と、中野が教える 「どうだ?」「ああ良いね」鏡の中の天音は、清楚で可愛い乙女になっていた
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