最悪?の出会い

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「殺されたのは、雑誌リアルの編集長の中野光義さんと 社員の沢木洋一さん、容疑者として捕まったのは、00芸能社所属の タレント、あの玉木恭太だと言う事です」と、女性リポーターが 興奮した顔と声で、あのパーティ会場の前で、実況中継をしていた。 「何だ、これは」慎之介も、天音も驚愕した。 「お前がそこへ行くと言ってたから、巻き込まれたんじゃないかと思って」 「行ってたよ、だけど、直ぐに帰って来たんだ」 「良かった、もし、何か聞かれても、当たり障りの無い事を、言うんだぞ」 「そんな事、言われなくても、分かってるさ」 「そうだな、じゃ、またな」徳永との電話を切り 「恭太の奴、我慢できなかったんだな~」そう呟いた慎之介は 天音を見て「どうした」と、言った。 天音は、まだ中継しているテレビを見たまま、ガタガタと震えていた。 「おいっ、どうしたと、言ってるだろ」慎之介の言葉に 「な、な、中野、、」と言ったが、後が続かない。 「お前、殺された中野を知ってるのか?」天音は、こくりと頷く。 慎之介は、顔色を変え「まさかお前、ハニートラップの仕掛け人か?」 と、天音の胸ぐらをつかんで、揺すった。 「ち、違います」「じゃ、何で中野を知っているんだ」 慎之介の剣幕に、泣きそうになりながらも、全ての事を話した。 「やっぱり、仕掛け人じゃないか」慎之介は、胸ぐらを掴んでいた手を離し 吐き捨てるように言った。 「私、本当に何も知らなかったんです、ただ、顔を見せて来れば良いって」 「もう良い、知らなくても、あいつらの手先にされていたんだ」 「すみません」「恭太も、あいつらのハニートラップにやられて 何もかも失った、次は、俺がそうなる番だったんだ」天音は、うなだれた。 この所の、ワイドショーや、週刊誌は、恭太の話題で持ちきりだった。 清潔感溢れる貴公子と言われて、慎之介と、一、二を争っていた 人気タレントだった恭太が、事も有ろうに、女と一緒に ホテルの一室で、寝ている所を、雑誌リアルにすっぱ抜かれたのだ。 しかも、その女には、夫が居たので不倫と言う騒動になり 連日、テレビで取り上げられ、恭太は、出演していた全てのドラマや CMを、降板する事になり、その違約金は、数億になると言われていた。 恭太には、難病を患っている母がいたが、数億の借金を背負う事になる息子に これ以上、迷惑はかけられないと、病院の屋上から、飛び降りた。 それでまた、ワイドショーや雑誌の騒ぎは、大きくなった。 恭太は、心配して電話してきた慎之介に 「ハニートラップに引っかかった」と、泣きながら打ち明けた。 ライバルだと言われて、人前では、二人もそれを認めていたが お互いに、境遇も似ていて、気も合った。 人知れず、連絡を取り合い、励まし合ったり、慰め合ったりしていた。 マネージャーの徳永からは「お前も、気を付けろよ」と、言われていたのに 天音の顔を見ただけで、この女は、大丈夫だと、家に連れて来てしまった。 話を聞けば、やっぱり中野の差し向けた女だった。
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