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吉弥と慎之介
朝早くから出掛けていた、橋本と郁子も帰って来て
かに玉丼の、お代わりをする。
「吉弥さん、曲は出来たんですか?」
また、怠けていたんじゃないかと、いう顔で、橋本が聞く。
「ああ、天音のお陰でばっちりだよ、午後からは、浅間の所へ行って
仕上げて来るよ」吉弥は、自信たっぷりで言う。
「じゃ、新曲は、二曲で、後は、グループの時の歌で良いんですね」
「ああ、そのつもりだ、そっちは?」「大方の話は付きました」
「そうか、お前が居るんだ、何の心配も要らないな」
吉弥は、頼もしそうに橋本を見て言った。
「話って、何の?」日野が聞くと「会場を借りるとか、舞台の設置とか
それに関する、人集めとかです」橋本は、さらりと言う。
「ええっ、会場って、何処?」「先日、ここが良いんじゃ無いかって
吉弥さんが言った所です」「え~~っ」日野は驚きの声を上げ
「あそこは、野外になるからって、言ってましたよね」と、言う。
「ええ、でも吉弥さんは、言い出したら聞かない人ですし
早く決めないと、何も間に合わなくなっちゃいます。
それで無くても、いきなり、一か月半後に、ライブだなんて
無茶な話ですから」それは、そうだろうと、皆も思う。
「その不可能な事を、可能にしてくれるのが、橋本ちゃんなんだよ」
吉弥は、澄ましてそう言った。
「まぁ、初めての単独ライブですから、どの位の観客になるか
全く見当もつきません、それで、野外の方が、良いかも知れないと
思ったんです」「でも、お天気は?」と、心配する天音に
「大丈夫、俺は、晴れ男だから」また吉弥が、無責任な事を言う。
「心配要りません、その日の前後一週間は、良いお天気だそうです」
小坂が調べたのだろう、そう言った。
「ほらな、会長の言う通り、大丈夫なんだよ」吉弥は、得意そうな顔で言う。
「小坂さん、チケットの方は?」「ああ、大丈夫、安田がデザインしてくれる
出来上がったら、印刷所に、持って行くよ」
「そうですか、これで一回目の販売は、何時でもオッケーですね」
「一回目って、二回目も有るの?」と、天音が聞く。
「はい、一回目の売れ行きを見て、追加するかどうか決めます」
橋本はそう言うと「土地は、直ぐ借りられましたし、騒音問題も
警察への届けも出しましたが、まだまだやる事が多くて
郁子さん、午後からもお願いします」「はい、任せて下さい」
そう言っていると、安田だけが帰って来た。
「これで良いか?」と、チケットになるデザインを見せる。
「良いね~」「良いですね」吉弥と橋本は、直ぐOKを出した。
小坂は、それを持って「日野、電話番を頼む」と、大急ぎで印刷所に走った。
「安田さん、かに玉丼だけど、食べる?」天音がそう聞くと
「お願いします、昼飯食べずに、書き上げたので」」安田はそう言って
椅子に座り、吉弥は一人で、橋本は、郁子を連れて、それぞれ出て行った。
「かに玉丼、旨~い」安田は、たちまち一杯目を食べ終えた。
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