吉弥と慎之介

1/6
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ

吉弥と慎之介

朝早くから出掛けていた、橋本と郁子も帰って来て かに玉丼の、お代わりをする。 「吉弥さん、曲は出来たんですか?」 また、怠けていたんじゃないかと、いう顔で、橋本が聞く。 「ああ、天音のお陰でばっちりだよ、午後からは、浅間の所へ行って 仕上げて来るよ」吉弥は、自信たっぷりで言う。 「じゃ、新曲は、二曲で、後は、グループの時の歌で良いんですね」 「ああ、そのつもりだ、そっちは?」「大方の話は付きました」 「そうか、お前が居るんだ、何の心配も要らないな」 吉弥は、頼もしそうに橋本を見て言った。 「話って、何の?」日野が聞くと「会場を借りるとか、舞台の設置とか それに関する、人集めとかです」橋本は、さらりと言う。 「ええっ、会場って、何処?」「先日、ここが良いんじゃ無いかって 吉弥さんが言った所です」「え~~っ」日野は驚きの声を上げ 「あそこは、野外になるからって、言ってましたよね」と、言う。 「ええ、でも吉弥さんは、言い出したら聞かない人ですし 早く決めないと、何も間に合わなくなっちゃいます。 それで無くても、いきなり、一か月半後に、ライブだなんて 無茶な話ですから」それは、そうだろうと、皆も思う。 「その不可能な事を、可能にしてくれるのが、橋本ちゃんなんだよ」 吉弥は、澄ましてそう言った。 「まぁ、初めての単独ライブですから、どの位の観客になるか 全く見当もつきません、それで、野外の方が、良いかも知れないと 思ったんです」「でも、お天気は?」と、心配する天音に 「大丈夫、俺は、晴れ男だから」また吉弥が、無責任な事を言う。 「心配要りません、その日の前後一週間は、良いお天気だそうです」 小坂が調べたのだろう、そう言った。 「ほらな、会長の言う通り、大丈夫なんだよ」吉弥は、得意そうな顔で言う。 「小坂さん、チケットの方は?」「ああ、大丈夫、安田がデザインしてくれる 出来上がったら、印刷所に、持って行くよ」 「そうですか、これで一回目の販売は、何時でもオッケーですね」 「一回目って、二回目も有るの?」と、天音が聞く。 「はい、一回目の売れ行きを見て、追加するかどうか決めます」 橋本はそう言うと「土地は、直ぐ借りられましたし、騒音問題も 警察への届けも出しましたが、まだまだやる事が多くて 郁子さん、午後からもお願いします」「はい、任せて下さい」 そう言っていると、安田だけが帰って来た。 「これで良いか?」と、チケットになるデザインを見せる。 「良いね~」「良いですね」吉弥と橋本は、直ぐOKを出した。 小坂は、それを持って「日野、電話番を頼む」と、大急ぎで印刷所に走った。 「安田さん、かに玉丼だけど、食べる?」天音がそう聞くと 「お願いします、昼飯食べずに、書き上げたので」」安田はそう言って 椅子に座り、吉弥は一人で、橋本は、郁子を連れて、それぞれ出て行った。 「かに玉丼、旨~い」安田は、たちまち一杯目を食べ終えた。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!