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吉弥のライブが近くなると、もう、誰が何をしているのか、分からない程の
忙しさで、日野は勿論、小坂まで駆り出されて、事務所には
サツキと天音だけと言う事も有り、食事作りで忙しい天音に代わり
サツキが、電話番をする程になった。
いよいよライブ当日になった、事務所には、サツキだけを残し
全員会場へ行く、慎之介も、その日だけは、撮影の休みを貰って
吉弥の為に会場へ行く。
すでに、大勢のファンが押し寄せて、会場に、雪崩のように入って来る。
吉弥は、安田が選んだ衣装を身にまとい、舞台の裾で、始まるのを待っている
その様子を見た、慎之介は「天音、吉弥に大丈夫だと、言ってやれ」と
天音の背中を押した。
傍に行くと、吉弥は、小刻みに震えていた。
あの、お気楽で、能天気な、何事にも動じないと思っていた吉弥がと
天音は驚き、そばに行く「天音、、」吉弥は、すがる様な目を向けた。
大スター吉弥でさえ、この大観衆の前に立つのは、怖いのだ。
そう思うと、天音は、思わず抱きしめて
「貴方は、大スター、日本一のロッカー吉弥よ、大丈夫、大丈夫」と、言った
「本当に?」「ええ、本当に大丈夫、私も、ここで見ているからね」
そう言って、背中をポンポンと叩く。
吉弥は、ぎゅっと天音を抱きしめると「天音、有難う」そう言って
額にキスをすると、舞台の中央に、走って行った。
「うわぁ~っ」と言う大歓声が、まるで怒涛の様に押し寄せる。
「皆~~元気か~」吉弥の声に「お~~っ」と、会場が答える。
「このくそ暑い中、俺の為に来てくれて、ありがと~~っ
じゃ、早速一発目、行ってみよう~っ」「わぁ~」「吉弥~」
皆の叫び声の中、吉弥の為に集まってくれた仲間が、楽器をかき鳴らし
吉弥が歌い始める、激しいロックの曲を、次々に歌いながら
歌の合間に「水分、取ってるか~」とか「気分が悪くなったら、早く言えよ」
等と、ファンに声をかける。
5曲、立て続けに歌った後、舞台は暗くなって、バンドの音だけが響く。
その間に、汗でぐっしょりの衣装を脱ぎ、安田が、新しい衣装を着せ
小坂が、水を飲ませ、直ぐにまた舞台に戻り、次々と歌う。
ひとしきり歌った後、舞台が明るくなった。
吉弥が「さて、俺が事務所を移籍した事は、知っているよな」と、聞く。
「お~~っ」「知ってる~」と、言う声が上がる。
「今日は、皆に、新しい事務所の社長を紹介するぜ」
「え~~っ」と言う声の後、ざわめきが広がる。
「プロダクション、ドラゴンの社長、竜崎慎之介だ~」
吉弥の言葉に、慎之介が出て来て、スポットライトの中に立つ。
「うわぁ~」「素敵~」「慎之介~」物凄い声が上がる。
「おいおい、俺より、凄いんじゃね」吉弥が、拗ねたように言うと
どっと、会場が、笑いに包まれる。
「皆さん、今晩は、私が、吉弥より偉い、社長の竜崎慎之介です」
慎之介がそう言うと、また、どっと笑いが起こる。
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