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「社長に違いないのですが、俺と吉弥は、大親友です。
その吉弥の為に、こんなに大勢集まって下さって、本当に有難う御座います」
慎之介は、手短に挨拶すると、今、撮影している、映画の話をしたが
「おいおい、俺のライブで、宣伝するなよ」と、吉弥に突っ込まれ
また、皆が笑う「宣伝させてやったんだからな、お前にも、歌ってもらうぜ」
「おい、止せよ、俺は俳優で、歌手じゃ無いぞ」
「うるさい、早くピアノの前に座れ」「強引だな~」
二人の掛け合いは面白く、本当に慎之介が歌うのかと
皆は、ワクワクした目で待っている。
ピアノの前に座った慎之介が、ポロンと、音を出すと
会場中が、静かになった。
「この花が~好きだと言った、あの人を~」慎之介の弾き語りに
吉弥が、声を合わせる、二人が歌う、美しいバラードに、皆は、うっとりとし
曲が終わると、物凄い拍手が、会場に響いた。
直ぐに慎之介が、激しくピアノを叩き、吉弥のヒット曲
「嵐の中で」が始まった。
「吹け~吹け~風よ~」吉弥の歌に合わせて、皆は体を揺すり
手に持ったタオルを、ぐるぐる回す。
吉弥と慎之介、会場の皆は、一体になって、共に歌を楽しんだ。
自分の歌や、好きな歌手の歌など、20曲以上歌った吉弥は
最後に、天音が作った歌を歌った。
ギターだけで聞いていたのとは違い、編曲され、楽器に乗った曲は
まるで別物だった、それを吉弥が熱唱する。
「わぁ~凄い」自分が、遊び半分で作ったとは、思えなかった。
吉弥のライブは、大成功のうちに、終わった。
皆は、大きな一息をついたが、慎之介の撮影は、ラストを迎え
更に過酷な状態が続き、もう、家に帰る事も無く
事務所や、ロケ先で、寝る日が続いていたが、やっと、それも終了し
皆は、遅い夏休みを取って、ゆっくりする事になった。
すっかり、慎之介と、仲良くなったジャックは
「今度は、プライベートで来るよ」と、言って、帰って行った。
そのジャックや、監督のクリフとも、仲良くなった天音だったが
一番仲良くなったのは、龍二だった。
龍二は、天音が来ていると知ると、必ず、楽屋に顔を出し
「天音ちゃん、ファンに貰ったんだ、良かったら、食べない?」と
有名店のお菓子や、珍しい地方の名物を持って来る。
「わぁ~嬉しい、有難う御座います」天音は、遠慮なく貰い
龍二は、天音が持って来た、弁当を、貰って食べる。
「美味しいね~天音ちゃん、お料理上手なんだね~」と、にこにこする。
天音は「初めは、何だか近寄りがたくて、怖いと思っていたけど
今は、一番優しい人だと思ってるわ」と、慎之介に言うと
「こんな俺でも、やっぱり可愛いみたいだ。
その嫁さんだからな、もっと可愛いんだろ」慎之介は、そう言って笑った。
慎之介も、龍二と一緒の場面で「父上」と、呼びかける時は
本当に嬉しそうだと、見ていて、良く分かる。
ラストのシーンで、傷付いた慎之介を抱き
「慎之介っ、死ぬな~」と、叫ぶ場面では、皆が泣いた。
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