あにいもうと

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… … … 「なあなあ、例の話聞いたか?」 「何の話?」 「“あの”武藤蒼獅が……女子に頭下げて謝ったんだってよ。『嫌な振り方して悪かった』って……教室の中でさ」 「何気に公開処刑じゃん……。つか、あんなプライド高そうな奴がよく謝ったな」 「どうせアレだろ。妹になんか言われたんだろ。あいつがそういう行動とる時はいつもそうだし」 「……。つか、前々から気になってたんだけど。武藤兄妹ってどういう感じなん? 顔も体格も違うし……双子ではないよな?」 「……えー、よく知らん。あんま細かい事情知ってるヤツいねえんだよな。あいつらもあんまり話したがらないし」 「一緒に行動してる所見ねーし……仲悪いんかな」 「その割に、蒼獅の地雷、妹だけどな」 「え、マジ? シスコン?」 「うーん……そこまでは知らんけど。でも、妹の悪口言うとめっちゃキレる。今回こっぴどく女子を振ったのだって……妹のこと悪く言われたかららしいぜー」 「え? 何て言ったん?」 「時々いるんだよ。『手間のかかる妹の面倒見て大変そうだね』とか言って蒼獅の気を引こうとするヤツ。蒼獅、そーゆーヤツに対してとにかくボロクソやるから」 「こわっ……」 「だけど妹が何か言うと、そーゆーヤツ相手でも蒼獅は頭下げたりするんだよなあ」 「……。変なの」 「だよなあ。変な感じだよなあ。あいつら。」 「でも、……まあ、あいつらなりに『兄妹』やってるってことなのかもな」 「少なくとも、本人たちはそう思ってると思うぜ」 「……やっぱ、変だな。あの兄妹は」 … … …
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