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01 瑪瑙可南子、謀られる。
「可南子さん!」
やたらと感動したような大仰な表情で、将流が顔を出した。桜通りにある、私の探偵事務所。
その時私は、差し入れに頂いた果物を食べようと口をあけたところだったから、まずはそれをゆっくりと堪能して、それから飲み込み、将流の方をちらとみやる。
「可南子さん! 聞いてくださいぃいぃぃ!」
こいつが鬱陶しい性格なのは重々承知だったけれど、こんなにも暑苦しかったっけ?
そんな疑問も吹っ飛ぶほど、今日の将流はウザさ100倍っぽい。
「なによ、うるさいわね」
「聞いてくださいよ、可南子さぁぁぁっぁん!」
よく見ると、両目がうるうると涙に滲んでいる。え? 泣いてるの? なんで?
「俺、ついに……ついに、なりました!」
「殺人犯にでもなった?」
ブドウを摘みながら問うと、
「違いますよ! 叔父さんに、なったんですよ!」
「あんた、24だっけ? おじさんにはまだ流石に早くない?」
「違いますよ! オヤジになったって意味じゃなくて、叔父さんになったんです!」
「……は?」
「姪っ子が! 姪っ子が生まれたんですよぉぉぉぉぉぉ!!!!」
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