06 瑪瑙可南子と神聖の舞

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「ああ、花村さんを呼びに行ったときに、ついでに頼んだんだ。それほど長くないというから、その場で先代の……紡祇さんの舞の映像を見せてもらった」 「まさか……それだけで覚えたんですか?!」 「そうだが?」 なにを不思議そうな顔をしているんだ、こやつは。 あの程度の舞、一度映像を見れば踊れるのは当然じゃないのか。 「はぁ~……」 将流はハンドルに頭をくっつけそうなくらい脱力し、大きなため息をついた。 「可南子さんには、結局敵いませんねぇ」 何がなにやらわからない。 が、そう言われて悪い気はしない。 「わかればいいのだよ、東雲将流くん」 「そうですか、ありがとうございます、瑪瑙可南子さん」 「フルネームで呼ぶな、鬱陶しい」 「可南子さんが先に呼んだんじゃないですか」 そうこうしているうちに、ブドウは残り数粒になってしまった。 『友の間』でのことを思い出す。 弥生の表情、花村さんの涙、それらを抱擁する将流の腕。 「……知ってはいたが」 「え? なんですか?」
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