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「ああ、花村さんを呼びに行ったときに、ついでに頼んだんだ。それほど長くないというから、その場で先代の……紡祇さんの舞の映像を見せてもらった」
「まさか……それだけで覚えたんですか?!」
「そうだが?」
なにを不思議そうな顔をしているんだ、こやつは。
あの程度の舞、一度映像を見れば踊れるのは当然じゃないのか。
「はぁ~……」
将流はハンドルに頭をくっつけそうなくらい脱力し、大きなため息をついた。
「可南子さんには、結局敵いませんねぇ」
何がなにやらわからない。
が、そう言われて悪い気はしない。
「わかればいいのだよ、東雲将流くん」
「そうですか、ありがとうございます、瑪瑙可南子さん」
「フルネームで呼ぶな、鬱陶しい」
「可南子さんが先に呼んだんじゃないですか」
そうこうしているうちに、ブドウは残り数粒になってしまった。
『友の間』でのことを思い出す。
弥生の表情、花村さんの涙、それらを抱擁する将流の腕。
「……知ってはいたが」
「え? なんですか?」
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