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「ICで録っているとは思ったが、本当に録っているという確証はなかった。指示してなかったからな。それなのに録音していたおかげで、ことがスムーズに運んだ。感謝している」
「え? え?」
「だーから! ありがとう、と言っているんだ! 食え!」
私はナガノパープル最後の一粒を、ポカンと開いた将流の口に投げ込んだ。
「か……可南子さぁぁぁぁぁん!!!!」
やたらと感動したような大仰な表情で、将流が叫ぶ。
「感動するのはあとにしろ。事故を起こす」
「感動しますよ! あの可南子さんが、自ら俺にあ~ん、て!」
「あ~ん、されて喜ぶなんて、お前は赤子か? 赤子なのか?!」
暗いハイウェイを、小さな車が駆けていく。
テールランプが、舞を舞うように揺れているんだろう。
胸の奥で、シャン、と、鈴の音が聞えた気がした。
了
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