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将流は両目をキラキラさせて、身を乗り出して聞いてくる。
こいつ、本気だ。
あー、ああ、あぁ、こういうの、やめてほしい。
「おめでとう、ほんと、おめでとう。けど、私はいかないから」
「そんなこと言わないで来てくださいよ!」
「来てくださいよ! なんて言われても、行きません。行く意味ないし」
「可南子さん、将来、俺の嫁になりますよね。つまり、美佳ちゃんは、可南子さんの姪っ子にもなるわけですよ? 出産祝いしとかなきゃ、だめでしょう?」
「おいまて。誰が誰の嫁になるって?」
「可南子さん、いい加減諦めましょう。俺たちの運命は、変えられませんから」
「意味わからんこと言うな。ってか、そんな運命なら、なおさら行かない。覆すためにも、絶対に行かない」
私は最後のブドウを口に放り込み、席を立った。
探偵事務所は、今日も開店休業。
暇だから、古本屋で買いあさった文庫本を読んでいる。
それを見透かしたのか、将流は意外な一言を口走った。
「依頼があっても……ですか?」
「依頼、だと?」
「そうです。依頼、です。報酬の出る、しっかりとした依頼です」
「お前の婚約者になりすます、とかいう依頼ならお断りだ」
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