夢に堕つ

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だから結婚してください。 将流さん。 後悔なんて絶対しません。 させません。 約束、です。 最後に、こんな私を選んでくれて、ありがとう。 どうして私なのか、失礼ながら最後までわかりませんでした。 でも、嬉しくて堪らないのです。 理由なんてなんだっていい。 ありがとう。 愛しています。 永遠に。 世界で一番幸せな花嫁より』 そう綴って、私はホテルのベッドに横たわった。 海外で式をあげたいと言う将流さんの希望で、私たちはフランスのホテルに泊まった。 そして結婚前夜の今日だけは、と部屋を分けた。 結婚前夜とは、なんと落ち着かないことか! 幸せなあれこれを考えてしまう。 四十の花嫁なんて、恥ずかしいけれど。 明日はドレスを着て、いつもよりはマシな私で、貴方の前に立つ。 誓いをたてて、指輪を交換して、キスをして。 誰もいない教会に、思い切りブーケを投げよう。 私は幸せだよ!って、世界中に知らせるように。 それから、それから。 それから、花嫁は夢に堕つ。 新しい旅はまだ始まったばかり。 飾られた白い古時計が見守った、ある夜のこと。 未来はまだ、誰も。 そう、誰も。 知らないのだ。 END
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