夢に堕つ

1/5
前へ
/5ページ
次へ

夢に堕つ

『どんなに長く、願ったでしょう。 どんなに強く、願ったでしょう。 諦めかけたことも、何度もありました。 けれどその度、貴方は私に言うのです。 太陽みたいな笑顔で。 大丈夫だ。心配ない。 貴方の両親が宗教家で、決められた方との結婚以外、認めない、と言った時も。勘当するぞと脅された時も、『どうぞお好きに』と、昂った両親が握った拳を下ろすあてがないほどあっさり、貴方は言い放ちました。 研ぎ澄まされた強さと冷静が、貴方の中に常にあるのは知っていたけれど、あれは、流石に驚きました。 私が子供の産めない体だとわかっても、貴方は眉ひとつ動かさず、『オマエがいればそれでいい。子供なんていらない』。 瞳を真っ直ぐ覗き込んで、そんな風に言うから、私は思わず泣き出してしまいました。 わんわんと、子供のように。 子供の産めない体と分かったこともショックだったし、何より、深く、深く、愛されているのが分かって、嬉しかった。ありがたかった。私も愛していると伝えたかった。なのに私は泣いてばかりで。 郊外の長閑な土地で、マンションを借りて。二人の穏やかな日は続いて。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加