夢に堕つ

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私はきょとん、として目を瞠るしかできませんでした。 別れ話だと思っていたら、結婚したい? 全く逆の話です。 「私、夢でも見てるのかな?」 「夢じゃない証拠に、指輪を嵌めてみるかい?」 そう言って、全盲の彼は、私の薬指に、ダイヤモンドの指輪を嵌めました。まるで見えているみたいに。 私の誕生石がダイヤモンドだと、こっそり調べたのでしょう。 「俺は目が見えないから、迷惑も沢山掛けると思う。でも、君を愛している。この気持ちだけは誰にも負けない自信がある。俺と、結婚してみないか?」 まるでお試しの結婚みたいにいうから、私はポカスカと貴方を叩きました。そしてまた泣きました。 泣き止むまで朝まで掛かって、やっと、「はい」と返事をしましたね。 そして今日、結婚前夜。 私は貴方に手紙を書いています。 私が貴方をどう思っているか、どんなに愛しているか、伝えたかったからです。 私と来たらいつも気持ちを貰ってばかりで、ちっともお返しができないから。 手紙で、言葉で。 ちゃんと伝えようと。 貴方は目が見えないから、読むのは私の仕事になってしまうけど……。 ええ、勿論。私も愛しています。 誰よりも。 この気持ちだけは、変えようにないもの。
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