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しばらくは何もする気になれなかった。
こんなことで?と思われるかもしれないけど、死にたくもなった。
精神的に少し落ち着いた頃、地元にいる親友 立川 杏佳 に別れたことを話した。
「あのさ、秘密にしたくないから言うけど、翔太郎くん、結構前からもう一人の子と付き合ってたみたいだよ?地元で見かけた人が何人もいてさ。てっきり、陽菜乃とは別れたんじゃないかって言う人もいたし……」
あぁ、地元あるあるだ。
私と翔太郎は地元が一緒だった。電車が一時間に一、二本くらいしか通らないような田舎。二人で上京してきたような形だった。東京にいれば、見かけられることなんてほとんどないのに。
「地元ってそういうのすぐ広まるし、わかっちゃうから嫌だよね」
京佳からの話を聞いて、涙が出てきた。
じゃあ、私と二股をかけてたってこと?
そして、私は彼女に負けた。
他の人を好きになるのは、しょうがない。
好きな人がいたなら、どうしてもっと早く言ってくれなかったの?
十年という月日、三十歳という年齢が自分の中でかなり負のウエイトを占めていた。
「二股かけられていた期間は絶対あるよ?翔太郎くんに問い詰めれば?私、代わりに電話してもいいし。なんか慰謝料とかもらえないのかな?こっちは十年だよ?男の三十と違うっての!?」
もう、何もしたくない。翔太郎とも話したくない。
「もういいよ。大丈夫」
私の返事を聞いて
「ちょっと!大丈夫?男なんていっぱいいるんだからさ?今まで翔太郎くん一本だったわけだし、いろんな人と遊ぶのもいいかもしれないよ」
男なんていっぱいいる。そうだよね、確かに。
いなくなって気づいた。私は、翔太郎が良かったんだ。
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