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夜が明けた。
一晩ですっかり雪景色となった街を、ぼくは『トウコンマートしばた二号店』まで歩いて行った。ちょうど運送業のトラックが一台、駐車スペースに入って来たところだった。滑り出しは順調のようだ。
「よお、来たのか」
振り向くと、支部長が立っていた。昨日から徹夜で現場指示を出していたらしい。服装は昨夜のまま、ポマードで固めた髪も乱れている。
「おはようございます。もう開店してたんですね」
「こっちは二十四時間営業だからな」
支部長は抗争……もとい、戦いを終えた後のような清々しい顔つきで言った。ジュニアに入ったのはぼくだが、支部長には支部長なりの戦いがあったのだろう。
「ジュニア、なんだか大きく見えますね」
「まだまだ成長しそうだぜ、敷地に余裕があるからな。中見て行くか?」
「そうしたいですけど、今日は一限から講義なんで。夕方また来ます」
ぼくの返事に、支部長はニヤリと笑った。
「ちゃんと四年で卒業しろよ。留年したらクビだからな」
うなずくと、ぼくは去り際にジュニアに向かって手を振った。戦友は軒下の回転灯を一瞬だけ光らせて応えた。
大学卒業後、トウコンマートに就職したぼくは、さらなる販路開拓のためついに宇宙に飛び立つようになったコンビニの搭乗者第一号になるのだが、それはまた別の話である。
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